ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第108話

三百二頁目

 

 今すぐにでも八つ裂きにしてやりたい衝動を堪えながら、まずは何があったのか二人から事情を聴いてみることにする。

 アルケンAに捕まれてBとCに睨まれている男は、頼りのラプトルが全滅したこともあってか必死に言い訳しながらも素直に話し始めた。

 時折涙目のフローラに糾弾されたりもしながら、とにかく二人の話をまとめて何が起きていたのかを大体把握することができた。

 

 どうもこいつは俺たちが前にスピノにやられて赤いオベリスクの近くへ移住した際に入れ替わるようにこの場所に現れたようだ。

 そして俺たちと同じ様な洗礼を受けながらも、こいつは早い段階でこん棒を作って対抗し始めたらしい。

 その過程で動物を仲間にする方法に気が付いて……何でもボーラでラプトルを拘束させて後ろから叩いて気絶させて、その口元にドードーを持って行って食い殺させて遊んでいた際に気付いたようだ……悪趣味すぎる。

 

 話を聞く限りこいつは襲ってきた動物に憎しみから乱暴に攻撃し返す過程で嗜虐性に目覚めたようだ……そこからは俺たちと違い居住区の建設もそこそこに動物をラプトルと共に動物を狩りまくっていたところで、夜中に空へ照明銃が放たれるのを目撃したのだという。

 前にフローラが拠点で作って撃って見せたものだろう……それでこの島に他にも人がいることに気付いたこいつは、同じく照明銃を作り合図をしてフローラを誘い出したのだ

 卵の番をしていたフローラは日が暮れかけたところで急に海岸で上がった照明に驚きながらも、自分と同じような漂流者が居るならとすぐに戻るつもりで慌てて駆けつけて……こいつはそうして現れた可憐なフローラを見てすぐに襲い掛かろうと決意したらしい。

 

 この島にある唯一の法則である弱肉強食に従うように……勝手にそんなものを法則にするなと叫びたくなるが、ペンギンを虐殺しようとした俺には強く言えなかった。

 尤もそれでも空を飛ぶ生き物に乗ってる以上、普通に攻撃を仕掛けても逃げられるだけだと判断して最初はとにかく笑顔で対応して荷が暮れる前に移動しようとするフローラを何とか押し止めたのだという。

 そして実際に辺りが暗くなってきて、とりあえず松明をサドルに付けようとフローラがアルケン君を着陸させたところで……ラプトルに襲わせて強引に引きずり下ろしたようだ。

 

 更にフローラを守ろうとするアルケンを、数の暴力と……フローラを盾にすることで攻撃を封じて殺して……その際にフローラは隙を見て男が持っていた照明銃を何とか奪い空に向かって打ち放った。

 そんな彼女を改めて拘束して、抵抗しようとするから軽くラプトルの爪で切り裂いて脅して……そこへ俺がやってきたというわけだ。

 最後までフローラの為に戦って命を落としてくれたアルケン君の遺体に黙祷しつつ、この男への怒りがさらに湧いてくる。

 

 フローラも物凄く怒っているようで、アルケン君の死骸の傍で涙を零しながら八つ裂きにしてやりたいと言って睨みつけていて……だけど新しく仲間になったアルケンABCは彼女のことを良く知らないから俺の命令だけを待っている。

 だから俺は……フローラを優しく抱きしめて落ち着かせながらこいつの処罰は俺に任せてほしいと頼み込んだ。

 彼女にこんな顔をしてほしくなかったから……人殺しなんかさせたくなかったから……。

 

 泣きわめきながらも彼女は最後にはこくりと頷いてくれて……そして俺はアルケン君からサドルをそっと外すと男を拘束しているアルケンAに松明と一緒に着けてその背中に乗って男を連れたまま移動を開始した。

 そして夜中の光源が殆どない海の沖の方まで行き、そこで男を投棄した。

 着水してバシャバシャと海面を叩きながら俺に非難めいた叫びと、助けを求める声を上げる男を無視してそのまま陸地へと戻る。

 

 恐らく体力の続く限り真っ直ぐ泳げば戻ってくることはできるだろう……途中で迷うこともなく何にも襲われずに済めばだが。

 これはあの男の言っていた弱肉強食のおきてだ……これで死ぬのならあの男も満足だろう。

 直接手を下すのでは俺もあの男と同類になりそうだから、あえてこうして環境に任せることにした俺は戻ってフローラと合流すると……この場にある篝火を全て壊していった。

 

 真夜中の海は上下左右も分からないほど漆黒の闇で、その中でこの光源だけが方角を告げる唯一の手掛かりだったはずだ。

 それを失った今、まっすぐ戻るなど不可能だろう……それでもあいつが何にも襲われずまっすぐ泳げるほど超人的な運の持ち主ならば一応は戻ってこれる可能性はあるのだから、十分温情はかけている。

 尤も十中八九体力が尽きておぼれ死ぬか、メガロドン辺りに食い殺されるのが落ちだろうけれど……こんなやり方で申し訳ないとフローラに謝まるが、彼女の方はむしろ自分が不注意過ぎたと必死に謝ってくる。

 

 同時に助けてくれてありがとうと言って俺の顔をじっと見つめてきて、そしてようやく笑顔を浮かべ……そこで不意に沖合からバチバチと言う騒音と変な発光が発生した。

 驚いて顔を見合わせながら、ペヤラちゃんへ乗って飛び上がった俺たちは海中に紫電が走っているのを目撃した。

 持ち歩いていた望遠鏡で見れば、そこにはいつぞや筏の旅の時に見た淡く光るクラゲが先ほどの男と思わしき物体に群がっていて、凄まじい電撃を放っているのが分かった。

 見れば近くに居たメガロドンまでもが感電して動けなくなっていて……俺とフローラは顔を見合わせると自然に頷き合った。

 

 ……あのクラゲにだけは絶対に近づかないようにしよう。




【今回名前が出た動物】

アルゲンタビス(アルケン君・アルケンABC)
ユタラプトル
スピノサウルス
ドードー
カイルクペンギン(ペンギン)
メガロドン
タペヤラ(ペヤラちゃん)
クニダリア(クラゲ)
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