三百三頁目
とりあえず山肌の拠点へ戻ろうとアルケンABCを追従させながら移動を開始したが、後ろに乗っているフローラは黙り込んだままだ。
おかげで空気が重くて仕方がない……フローラと初めて二人乗りしているというのに、どうしてこんな重苦しい気持ちを味合わなければいけないのだろうか。
だから少しでも明るくしようと適当に新しく見つけた素材に付いて語っていたところで、不意にフローラが後ろからギュっと力強く抱きしめてきた。
成長途中の身体とはいえフローラの服が色々とボロボロになっているせいか、妙に柔らかい何かが背中に触れるような気がしてドキッとしそうになるがすぐに顔らしきものが押し当てられて涙と思しき液体で濡れる感触が伝わってきた。
そして再度フローラは謝罪し始める……気にしていないと言っても彼女は何度も何度も謝り続けた
どうやら自分の不用意な行動のせいでアルケン君が命を落としたのがとても気になっているようだ……考えてみれば彼女が目の前で仲間の動物が死ぬところを見たのはこれが初めてだったような気がする。
生まれてくる子供を見せて上げれなかったと悔やむフローラに心苦しさを覚えた俺は必死に慰めようとした。
フローラのせいじゃない、仕方がなかった……俺が留守にしてたのも悪かった……そんなことを何度も呟いたような気がするが夢中だったのでよく覚えていない。
ただそのやり取りの中で彼女は俺にも謝罪し始めてきたために、フローラが無事でよかったと……君が居なくなったら俺はもう生きていけないと告げたことだけは覚えている。
何故ならそれを聞いてフローラはようやく謝罪を止めて……より強く俺を抱きしめてくれたからだ。
そして風を切る音に混じってぽつりと、私も……と言ってくれたような気がした。
それが妙に嬉しくて、同時に何やら妙にドキドキしてしまって……そんな中でかがり火をたいてきた拠点が異様に明るく目立って見えてきた。
とにかく今日はもう休もうとフローラに告げて拠点へと着陸すると、戻ってきた俺たちを仲間の動物たちが出迎えてくれた。
どこか安堵したようにフローラにすり寄る仲間たちを撫でまわしながら、彼女は少しずつ元気を取り戻したかのように僅かに微笑んで見せてくれた。
そしてそのまま二階の孵化部屋へ向かうと、タヴィちゃんに抱き着いてもう一度だけ謝罪を口にした。
タヴィちゃんがどう感じたのかは分からないけれど、まるでフローラと親しかったアルケン君がしていたみたいに嘴で優しくフローラを突いたかと思うと翼を広げて優しく抱きしめるのだった。
しばらくそうしていたかと思うとフローラは改めて涙をぬぐうと、シャワーを浴びてくるから卵を見ていてと言って部屋を出て行った。
どうやらほぼ立ち直れたようでほっとしながらも、言われたまま卵の傍に座って様子を眺めながら俺は先ほどのことを思い返してた。
先ほどフローラを襲った人間は、よくよく思い返してみるとやっぱり俺たちと同じように左腕に件の鉱石が埋め込まれていた。
つまりあいつも何かの意図で作り出された存在だと思う……だけどまさかあんな下種な人間が現れるとは思わなかった。
あんな性格の奴を送り出すだなんて、この島の管理人は何を考えていて……俺たちに何をさせようというのだろうか?
いやそんなことよりも……フローラを守るためにも、これからは新しく表れる人間に対しても警戒心を強める必要がありそうだ。
【今回名前が出た動物】
アルゲンタビス(アルケンABC・アルケン君・タヴィちゃん)