三百四頁目
相変わらずフローラは徹夜で卵を見守るつもりのようで、だけど俺には傍に居てほしいとお願いしてきた。
やはり先ほどの一件がまだ尾を引いているのだろう……もちろんすぐに頷いて、俺は彼女の傍で横になった。
そんな俺にフローラは、何と膝枕をしてくれた……絶対に辛いと思ったけれどさせてほしいと懇願されて断れるはずもない。
女性の膝枕で眠るのなんか初めてで、おまけに優しく頭を撫でてくれるものだから何やら物凄く幸福感を感じながら目を閉じた。
……そのせいで俺は頭を打つ衝撃で目を覚ます羽目になったのだが。
痛みを堪えながら周りを見るとフローラが呆然とした様子で立ち上がり何かを見つめていた。
俺もまたそちらに視線を向けて……か細い声で、だけど懸命に泣き声を上げる幼い生まれたての小鳥を目の当たりにした。
生まれた……ついに生まれた……目の前で新たな生命が……何やらへんな感動がある。
フローラも同じなようで、ゆっくりと近づくとタヴィちゃんに許可を求めるように見つめてからそっと手を差し伸べた。
そして生まれた小鳥を優しく両手で抱き上げると、フローラに向かってその子は何かを求めるように泣き声を上げて翼を向けるのだった。
三百五頁目
フローラはもうその生まれてきた小鳥にメロメロだった。
どうもまた摺り込み染みた状態になっているようで、本当の親であるタヴィちゃんを差し置いてフローラに付いて回り、余りの可愛さに笑顔で抱き上げられればその腕の中で幸せそうに佇んでいる。
尤もタヴィちゃんはあまり気にしていないようで、むしろ微笑ましそうにフローラとその子供……フローラが父親の名前を取ってアルケー君となずけた小鳥のやり取りを見守っている。
俺もその可愛さに最初は抱っこさせてもらおうかとも思ったが、何故か嫌そうに掌を突かれてしまった……どうも最初に近づいて触れたフローラだけが特別なようだ。
ちょっとだけ悔しいような気持ちになりながら、フローラに手渡しで餌である生肉を食べさせて貰っているアルケー君をじっと見つめていた。
……しかし生まれてすぐに離乳食も何もなくいきなり生肉を食べるだなんて……これは鳥だからなのか、それともこの島の生き物全般の生態なのだろうか……余りそう言う知識のない俺には判断がつきそうもない。
三百六頁目
既に日が昇っているけれど徹夜していたフローラは小鳥に構いながらも眠そうにしている。
だから少し眠る様伝えると、不満そうにしながらも結局はいう通りに小鳥を一旦タヴィちゃんに預けて眠りについた。
この島の恐ろしさは十分に理解しているからこそ、体調不良にも気を付けているのだろう。
そんな彼女が眠りにつくのを見守ってから、俺はタヴィちゃんが小鳥のお世話をしているのを確認すると食事の生肉を用意してからそっとそこを抜け出しペヤラちゃんとアルケンABCと共に飛び立った。
確認しておきたいことがあったから……そしてそのまま俺は昨夜あの男ともめた海岸へと戻ってきた。
まず軽く周りを見回し、次いで沖合のあの男が襲われた辺りを見に行くとまだクラゲは浮かんでいたけれどあの男の残骸は何も残っていなかった。
最後に建物へと近づき、周囲に会った篝火が壊れたままになっていることを確認した上で軽く深呼吸しながら中へと入って行った。
そして……やはりそこに誰も居ないことにほっとしながら軽く探索して誰かが出入りした後も無いか念入りにチェックした。
万が一にもあいつに仲間が居たりしたら……或いは既に捕まっている女性などが居ないか気になっていたのだ。
それともう一つ……前に生物の最低限数が決められているのではと思い、もしもあの男が死んだら新しい人間が即座に送られてくるのではと仮説を立てたのだ。
その場合は間違いなくこの海岸近くに現れて、そしてこの拠点を見つけて入り込むだろうから……だけどそれも杞憂だったようだ。
やはりこの鉱石を埋め込まれた人間だけは他の動物とは別扱いのようだ。
しかしそれはつまり、ここの管理人は人間に何かをさせようとしている説が濃厚になりそうで……何やら嫌気がさしながらも、とにかくメカステゴの時に考えたように人間が急に増えたりしなさそうなことにほっとして……はっと思い出した。
そういえば仲間にして帰り道で回収しようと思っていたメカステゴのことを完全に忘れていた……どうもペンギンショックが強すぎたようだ。
尤もアルケンABCでも掴むことができないから連れて帰るのは難しそうだし、今は気づかないふりをしておこう……ごめんよメカステゴ。
【今回名前が出た動物】
アルゲンタビス(タヴィちゃん・アルケー君・アルケンABC)
TEKステゴサウルス(メカステゴ)
カイルクペンギン(ペンギン)