三百七頁目
主の居なくなった建物の中を漁り、作り掛けだった火薬と発火粉を回収し後は目ぼしい物がなかったので放置して俺はその場を後にした。
拠点自体はこのまま残しておいて、新しく来る人達に利用してもらったほうがいいだろう……それこそいきなり動物に襲われても、逃げ込む場所がない事の恐怖は俺が一番よく知っている。
それこそ深夜など気が狂いそうなほど……ひょっとしてあの男も同じ気持ちを抱いて、本当に頭がおかしくなってしまったのではないだろうか?
尤もだからと言って俺にとって一番大切なフローラを傷つけようとしたことを許す気にはなれないが……せめて俺だけは名前も知らないあの男がここに居たことを忘れないようにしようと思った。
……命を奪うような行為をしたのは俺なのに、全く偽善者めいた考えだ。
まして他の動物は素材欲しさのために当たり前のように殺して回っているくせに今更……何やら自己嫌悪で落ち込みそうになる。
こんな時、最近の俺はフローラの顔が見たくて仕方なくなる……だから急いで戻ると、未だに寝ている彼女の傍へ近づきその可愛い寝顔を眺めて癒されるのだった。
三百八頁目
お昼近くになってようやく目を覚ましたフローラは、まず畑の様子を見に行き収穫も済ませるとそのままシャワーを浴びてから食事を作って持ってきてくれる。
それをありがたく頂きながら、俺たちは今日の予定を話し合うことにした。
そして俺が沢山新しい素材を手に入れてきたことを知ると、それで何か作れないか試してみようということになった。
早速、外に居たアルケンABCを呼び寄せると持って帰ってきた素材の中からフローラが見たことのない黒曜石、原油、真珠そして有機ポリマーを見せてあげる。
目を輝かせてどこにあったのか尋ねてくるフローラに詳細を……どれも豪雪地帯にあったのだと告げると彼女は興味深そうにしていた。
ついでに前に俺が考えた仮説……この島に付いた人間が行きにくい場所ほど……ちゃんと準備しなければ入れない危険なところほど良いものがある可能性を告げると納得したように頷いてくれた。
……尤もこの仮説が正しいと一番良いものがあるのは洞窟の中ということになりそうなのだが……しかしあそこで素材なんか見ている余裕はなかった。
それでもあの設計図が入った特殊なカプセルとアーティファクトだけでも十分お釣りが来そうだが……やはりこの島は過酷な環境に人間を追いやり克服させることで何かを目指させているのではないだろうか?
まあそんなこと考えても仕方がない……俺が考えなければいけないのは、この子を守りながらどうやって生活していくかだけだ。
そこで会話を打ち切ると素材を眺めて何か考えているフローラを置いて、俺は居住区の隣の工房にある製錬炉で金属鉱石を溶かしにかかろうとした。
しかし余りにも回収した量が多すぎて、とても製錬炉一つには入りきらない……仕方なく外の空いている空間に新しい製錬炉をいくつか作り、同じくあの男の拠点から回収してきた発火粉を利用してまとめて焼き始めた。
おかげでかなりの熱気を感じて汗が止まらない……まるで本当の工場のように煙が上がっていて、何故か少しだけ興奮しそうになってしまう。
【今回名前が出た動物】
アルゲンタビス(アルケンABC・アルケー君)