ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第114話

三百十三頁目

 

 戻ってきた俺を外でアルケー君を撫でながら何か作業をしていたフローラが笑顔で出迎えてくれた。

 俺もまた笑顔を向けてただいまを告げようと近づいて……何やら嗅いだ覚えのある人工物の匂いに戸惑ってしまう。

 独特の刺激臭でありながらも、鼻をつまみたいほど強烈でもないこの匂い……その正体に思いつくのと同時にフローラが自慢げに瓶に入っている液体を見せつけてきた。

 

 まさかこんな島でガソリンをお目に掛ける日が来るとは思わなかった……どうしたのか聞いてみると、製錬炉に原油をくべたらどうなるか試そうとしてその際に付けていた皮の手袋も一緒に入ってしまったのだという。

 そうすると何やら軽い破裂音がしたので、気になって左手の鉱石を見ながら色々と試しているうちに皮と原油を利用することでガソリンが生成できることに気付き、さらにそうして作ったガソリンをこうして容器に移せる方法も思いついたのだという。

 何故、皮と原油でガソリンになるのか科学知識に疎い俺には全く分からないが実際に出来上がっているのだから仕方がない。

 

 尤もこんな危険なものを作ってどうするのか尋ねると、これから作る物に使うのだとフローラは笑って答えた。

 そして俺から大量のセメントを受け取ると、満足げにしながらもこれからもどんどん必要になると思うから定期的に取ってきてくれと無邪気に頼んでくるのだった。

 ……あんまりあそこへは危険だから行きたくないのだけど……まあカエルがかなり戦力になるからまた殿……護衛を連れて行けば大丈夫かな?

 

三百十四頁目

 

 アルケー君と追いかけっこしながら作業場へと入って行ったフローラを見送ったところで、手持ち無沙汰になった俺はアルケンABCをつれて日課のように山頂へと赴いて金属鉱石と水晶を確保して戻ってくる。

 そして前に大量に焼いていた金属のインゴットを回収して、交換するように新しい金属鉱石を投入していく。

 しかしこんなにたくさん作っても置き場が……そう思ったところで作業場の内部からフローラが回収したインゴットはこっちに持ってきてくれと叫んでいる声が届いた。

 

 言われるままに工房内に入ると、前に俺が寝泊まりしていたスペースが解体されて代わりに物を大量に収納できそうな縦長の箱が幾つも並んでいた。

 本当にフローラは精力的に動いているのだと脱帽しながら、その中に荷物を仕舞っていく俺……しかもよく見れば、その棚の中には設計図やレシピを収める専用の本棚らしきものまであった。

 やはりクラフト面やこういう内装に関してはフローラに敵いそうもない……ありがたく頼らせてもらうとしよう。

 

 そんなことを考えている俺の耳に、フローラの歓声が聞こえたかと思うと運ぶのを手伝って欲しいと言ってくる。

 だからすぐにフローラの元へ向かい……作業机の上に出来上がっているそれより一回り大きな物体を見て目を丸くしてしまう。

 何やら金属でできた、それこそ現代の工場にでもありそうな円盤の回転装置が付いている物体……それは精密な物質を作るのに必要不可欠な旋盤と呼ばれる工業用機械だった。




【今回名前が出た動物】

アルゲンタビス(アルケー君・アルケンABC)
ベールゼブフォ(カエル)
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