ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第116話

三百十七頁目

 

 完全に日が落ちる前にフローラは畑の方に生肉を干してあるから回収してきてくれと頼んできた。

 何でも彼女が言うには、生肉は一カ所にまとめておくと内側が腐りにくくなるため、一つ一つ分けて干しておいた方がずっと速く腐るのだという。

 それを回収して麻酔薬を作ってほしいというのだ……もちろん頷いて鼻を押さえながら畑の傍にある……何やらハエが集っている箱の傍にある生肉を回収していった。

 

 恐らくあの箱は肥料か何かを作るための堆肥箱だろう……女の子なのにこういう汚い物でも便利なら作って利用しているフローラは本当に素敵な子だと思う。

 これを弄っていると思っても幻滅したりはしない、むしろそこまで俺たちの生活のために尽くしてくれている彼女への想いが強くなる一方だ。

 ……そこで気づいてしまう、俺はフローラのことをどう思っているか……どんな姿を見ても愛おしく感じて、彼女のためなら死んでもいいと心の底から思える異性の相手……それはつまり……止めよう。

 

 多分この気持ちを素直に伝えたらフローラは応えてくれると思う……だけどそれは気持ちがどうとかいう問題ではなく、この場所は一人で生きていくには余りにも過酷過ぎる環境だからだ。

 だからもしも俺がそう言えば、フローラは内心どう思っていても頷くしかないのだ……そんな強制するような真似はしたくない。

 大体俺はフローラが傍に居て、微笑んでくれている今の状況で十分幸せなのだから関係の発展を望む必要などないのだ。

 

 ……だからこそ一つだけ恐ろしい……もしも新しい人間がやってきて、それがフローラ好みの異性だったらと……尤も前の事件を考えると彼女は新しく来た人間と合流したがらないかもしれないが……そうであってほしいと願ってしまうあたり、俺はどうしようもなく浅ましい人間だ。

 

三百十八頁目

 

 フローラに言われるまま麻酔薬を大量に作り上げていくが、その間フローラも俺の隣に座り楽しそうに火薬を作っていた。

 時折俺を見上げてくすくすと笑い、たまにこちらの肩に頭を乗せて休むふりをして……顔を赤くする俺に微笑みながら自分も顔を赤くして……物凄く幸せで、だけど同時に胸がドキドキして落ち着かなかった。

 何せ最近のフローラはちゃんとシャワーを浴びていて清涼感溢れる上に、もともと整っている美貌がしっかり映えてとても可愛いのだ。

 

 そんな子にそんな風にじゃれつかれて、こんな風に女性と関わっていた記憶のない俺はどうしても胸の高まりが収まらないのだ。

 おまけについ先ほど、彼女への想いに気付いたばかりとなると……正直心臓が破裂しそうだ。

 それでも離れたいとは思えないし、この時間がもっと長引けばいいとすら願ってしまう。

 

 しかしそうしてあまり長くくっ付いていると間にアルケー君が割って入ってきてしまう……どうもフローラの腕の中に抱きしめてもらいたいようだが、これはわざとやっているのだろうか?

 そんなアルケー君は俺がお世話しようと手を伸ばしても、ふいっと顔を背けてしまう。

 どうやら完全にフローラへと懐いてしまっているようだ……こんなに一緒にいるのだからお世話ぐらい受け付けてくれてもいい気がするのに。




【今回名前が出た動物】

アルゲンダビス(アルケー君)
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