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作業を終えて山肌の拠点に戻ると、丁度周りが薄暗くなってきていた。
しかしここは鉄を焼きガソリンを精製している無数の製錬炉と、篝火によって目立っているから見失うことはなく無事に戻ることができた。
そんな俺を再度フローラは出迎えてくれて、今度こそシャワーを浴びようと俺の手を引っ張り始めた。
そしてシャワー室へ連れ込むと、どこか自慢げに扉を開けて中を見せてくれた。
果たしてそこには……石をセメントで固めて形を整えて作ったであろう貯水槽を利用した、お風呂が出来上がっていたではないか。
驚く俺が見てみるとお風呂場へつながる配管の一部が鉄製になっており、しかも製錬炉の上を通ることでその放射熱を利用して温められた状態でお湯が流れ出るようになっている。
それをもう一つ水が出るシャワーと埋め合わせることでちょうどいい温度に調整したものを貯めてあるようで、湯気の上がり方と言い本当に気持ちよさそうなお風呂が出来上がっていた。
しかも感激している俺にフローラは更に、内部に作られた簡易なでっぱり部分を指し示しそこにある石鹸までも見せつけてきた。
カプセル巡りして手に入れるしかないと思っていたのにどうしたのか尋ねると、ポリマーがもこもこしていて美味しそうだから食用に使えるかと思って調理鍋で色々試していたら、その少し前に作業していた際に付いた原油が中に零れ落ちたのだという。
するとその一部が固まってきて、掬い上げて擦ってみると泡立ったのでこれは使えると思ってもう少し多めの量で試したらこの通りでき上がたのだという。
何というか、若さゆえだろうか失敗を恐れず試行錯誤するその意思が逞しい……ちなみに有機ポリマーは結局、どう調理してもお腹を壊すから食べちゃ駄目だと真顔で言われてしまった。
万が一ちょっとでも致死量に達する危険物だったらどうする気だったのだろうか……一応動物実験して即死しないとは試してあったみたいだが……。
それはともかく、この島に来て以来の初めてのお風呂に嫌が応にもテンションが上がっていく俺は早速入ろうとして……ふと思い直す。
せっかくこれほどの物を作り上げたのだから、功労者として一番風呂はフローラが入るべきだと思ったのだ。
……単純に男の俺が先に入ってお風呂を汚して、後に入ったフローラに嫌がられたくないという気持ちも強いが……決して女の子の残り湯に浸りたかったわけではない。
だからフローラに先に入る様告げると、彼女は首を横に振りながら少しだけ頬を赤くしつつ……二人で入れるぐらい大きめに作ったから大丈夫だと言うのだった。
驚き固まりながらも何がと尋ね返す俺の前で、フローラは恥ずかしそうにしながら背中を向けたかと思うとそのまま自らの衣服に手をかけて……。
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生まれてきてよかった……俺は今、最高に幸せです。