三百四十五頁目
まるで恋人との温泉旅行のようなひと時を過ごした俺は、物凄く良い目覚めを迎えることができた。
身体も軽く何でも出来そうなぐらい気力に溢れている……尤も、隣で寝ているフローラを起こしたくないしその可愛い寝顔を見ていたいから動くわけにもいかなかった。
そうしてフローラが起きるまで付き合って、起きてからも恥ずかしそうに微笑みながらも俺の腕を取って離さない彼女とくっ付いたまま食事をとり今日の予定を話し合った。
その際に例の巨大な翼竜について話すと、面白そうだから捕まえに行ってもいいと言ってくれた。
そして支度を済ませるから昼までは自由行動と言うと、ササっと部屋を飛び出して畑や孵化部屋、それに作業所を行き来し始めた。
本当に元気で活力的だが、今日はいつにもまして激しく動いているように見える……どうやら気力が充実したのは俺だけではなかったようだ。
改めて俺も動き出そうとアルケンABCに跨り、いつも通りの日課を行うことにした。
すなわち近場の山から金属鉱石を含む素材を回収して鉄を溶かしつつ、その間に南の海岸へ様子見に行くのだ。
この一連の作業を終えたら、残る時間はフローラに頼んであのライフルを貸してもらい近場に居る生き物でも捕まえに行こう。
三百四十六頁目
海岸の砂に塗れつつある住居を確認したが、今回も誰も使っている様子はなかった。
まだ来ていないのか、それとも少しずれた場所に来ているのかは分からないがとにかくいつでも使えるように整理だけはしておこうと思う。
しかしここに来るまで考えていたのは、もしも新しい人に出会えたとして……そいつを俺たちの仲間に加えて山肌の拠点に連れていくかどうかだった。
新しく来る奴が安全な奴とは限らない……まして娯楽など殆どないこの島では、どうしても原始的な欲に塗れる奴が出てるのが当然な気がする。
実際に俺だって狩りの喜びを味わったことだし、異性のフローラと共に居てドキドキしているのだ。
それでも自分で言うのもなんだが俺は紳士的……悪く言えばヘタレだからまだ人間らしい暮らしが出ているが、前の男のように欲求に従い短絡的な行動を起こす奴が現れても不思議ではないのだ。
そんな奴をあの拠点に連れて行ったらフローラに迷惑が掛かるかもしれない……何より俺は、フローラと二人きりの生活を邪魔されたくないのだ。
だけどそんな理由で人を見殺しにするのもどうかと思うし、こんな島では助け合ったほうがいいのも事実だ。
実際にフローラは俺に出来ないことをたくさんしてくれている……新しく来た人がドンドン加わればいずれ村のようなものも作れるかもしれない。
……だけど俺は……原始的な生活を続けることになったとしてもフローラと二人きりの方が……ずっと幸せになれる気がするのだ。
【今回名前が出た動物】
アルゲンダビス(アルケンABC)