三百六十四頁目
ペヤラちゃんの背中で幸せな空気を感じながらも、時間は容赦なく過ぎていき日は落ちて行こうとしている。
本当はずっとこうして居たかったけれど、行動しないわけにはいかない……そう思ってフローラに話しかけて、最初の浜辺に寄っていくことを考えていると話した。
その上でもし生存者がいても信じられるかどうかわかるまでは最低限の支援しかせず……またもしも信頼できそうであっても、共に行動するのは避けるようにしようと伝えると納得したように頷いてくれる。
一緒に行動する気こそないが見殺しにするのは避けたいというあたりも俺と同じ考えのようだ……何やら心が通じ合っているようでこんなことでも嬉しくなる。
その上で移動を開始したが、フローラは念を押すように同行しないことと……もしもそこに居たのが女の人なら私が話すと強く言い含めるのだ。
どうやらフローラも心の底で新しく魅力的な女性が来たらどうしようと思っていたらしい……尤も仮にそんな人が現れても俺の一番辛い時を支えてくれたフローラ以上の女性はいないのだけれど。
とにかくこの調子ならば俺の危惧した展開にはならなそうで、それだけで安堵してしまった俺は今度こそ何の憂いも無いとばかりに最初の浜辺へと向かい……前に来たときはなかった篝火が浜辺に無数に立てられているのを見つけてしまうのだった。
三百六十五頁目
フローラと二人で顔を見合わせながらその篝火の傍へと飛んでいくと、すぐ傍でこちらに向かい弓矢を構えている男を見つけた。
慌てて松明を焚いて人が乗っていると示してやると、手から離さないまでも下におろした上でこちらを睨みつけている。
壮年と思わしき男性は服装こそ既に布の一式で固めているものの、その異様なまでの筋肉質な身体は隠し切れていなかった。
恐らくまともに組み合ったら俺では勝ち目はないだろう……それでも向こうは動物を連れていないから、戦いになれば数の差で間違いなく勝つことは出来そうだ。
だから一応は話し合ってみようと、緊張と興奮で高鳴る胸を押さえながら傍へと降り立った。
果たして向こうはこちらを警戒して弓矢こそ手から離さないが、それでも知性的な立ち振る舞いで一礼したかと思うと自らを魏国に所属するオウ・ホウだと名乗りを上げた。
魏という言葉からして何やら眩暈がしそうであったが、そこでガサガサと少し離れた内陸部にある草むらが揺れ動いてエリマキトカゲが出た……かと思うと即座にうち貫いて見せた。
距離のある所に居る小さな獲物を見事一発で打ち抜くほど弓矢に手馴れている様子と言い、間違いなくこの人は弓矢が主力の戦場で戦い抜いてきた猛者なのだろう。
改めて俺たちに色々と訪ねてくる彼は、どうやら見ず知らずの生き物が溢れるここを噂に聞いた南蛮の地か何かだと思っているようであった。
……果たして何をどう説明すればいいのやら……しかしまさか古代中国からまで人を連れてくるなんて……勘弁してくれ。
【今回名前が出た動物】
タペヤラ(ペヤラちゃん)
ディロフォサウルス(エリマキトカゲ)