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戻ってきた俺たちをフローラはとても自慢げに出迎えた……かと思えば、新しい卵と金属質に光り輝くメカステゴに俺が首に巻いているカワちゃんを見て悲鳴に近い歓声を上げてすり寄ってきた。
そしてカワちゃんを自らの方に手招きして首に巻いて遊び始めて、俺があの電灯などが気になって話しかけても上の空な返事しか返ってこなくなる。
どうやらよほどこの可愛さがクリーンヒットしたようだ……これではとても会話になりそうにない。
仕方なく先に南の海岸を確認して来ようと一声かけてからオウ・ホウさんが居た時のためにプレゼント代わりの蜂蜜も一瓶だけ持っていくことにする。
そしてケツァ君に乗りアルケンAを護衛代わりに追従させて飛び立とうとして……そこで防壁の外にいる肉食が妙に傷だらけであることに気が付いた。
何よりその足元には殆ど分解されているがティラノより一回りも大きな巨体が横たわっている……物凄く気になるがフローラは相変わらず上の空だ。
い、一体俺が居ない間に何があったのだろうか?
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とにかくフローラが深刻そうでないことから心配する必要はないと判断した俺は、後ろ髪惹かれる想いを抱きつつもその場を飛び立った。
そして南の海岸に向けて一直線に飛び立って行き例の拠点へと到達する……と同時に何やら甲高い声が聞こえてきた。
驚きながらもその声が拠点の中からすることに気が付いた俺が慎重に近づいていくと、次いでオウ・ホウさんの物と思わしき疲れたような声が聞こえてくる。
まさかこっちまでこんな著しい変化があるとはと驚きつつ、ドアをノックして中へと入ろうとして……簡易ベッドの枕が飛んできてぶつけられてしまう。
一体何が起きているのかと枕をどけて室内を覗き込んだところで全身がズタボロで重症一歩手前の大怪我を追っているオウ・ホウさんと、その近くで毛布で体を隠しつつこちらを威嚇するように睨みつける赤い髪の毛が印象的な女性の姿があった。
本当に何がどうなっているのか混乱する俺に気付いたオウ・ホウさんは救いを求めるような視線を向けてきて……恐らく枕を投げ付けて来たであろう女性は高貴さを感じさせる美貌を歪ませこちらを見下しながらこう叫ぶのであった。
「無礼者っ!! 妾を誰だと思っておるのじゃっ!!」
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彼女を宥めつつ話を聞こうとするが向こうは癇癪を起こしているかのように騒ぎ立てるばかりで全く話にもならない。
仕方なくオウ・ホウさんに事情を聞こうとするが、こちらは苦痛に顔をしかめており自らの傷口を簡易な包帯で巻いて治療しようとしている。
そんな彼に普段から持ち歩いているメディカルブリューの効能を説明して分けると、感謝の言葉を口にしつつ飲み干していった。
果たして痛みが一気に引いて怪我も劇的に癒えていくのを体験したオウ・ホウさんはこの薬の効能に感激しつつ、作り方を聞いてくるがその前に俺がもう一度この状況を訊ねると困ったように説明を開始した。
まず彼の傷とあの女性は全く無関係であると説明したオウ・ホウさん……どうもこの大怪我は北の豪雪地帯に入ったところにある洞窟を探索した際に負ったものらしい……よくぞまあ皮の装備だけであれほど寒いところへ向かったものだ。
もう少し詳細を聞こうと思ったが、そこでまた女性が無視するなとわめきたてるので仕方なく先に彼女はどういう存在なのか聞いてみるがオウ・ホウさんも良く分からないという。
どうもボロボロになった彼が怪我を治療しようとこの拠点に戻ってきたところで、ラプトルと思しき動物が入り口を壊そうと叩いているのを目の当たりにしたという。
仲間にしたいところであったがこの怪我を負っている状態で無理は禁物だと判断したオウ・ホウさんは、そいつを遠距離から弓矢で打ち抜いて始末して安全な家の中で一息つこうとして……女性の悲鳴を聞いた。
そして驚いて中に入ったところで毛布で体を隠して震えている彼女が居て、とにかく落ち着かせようと危険が去ったことを伝えたところ……途端にこのように尊大な態度を取られてしまって困っているというのだ。
一応女性の方にも確認しようとしたが相変わらず不敬だとの敬えだの、こんな野蛮な地に妾を連れて来て何をする気だの……騒がしい限りだった。
どうもその態度と口にする言葉からして、どこぞの王族とか貴族に類する人なのかもしれないが……一体俺たちにどう接しろと言うのだろうか?
……東洋の人じゃないっぽいし、フローラを連れていたら少しは会話になっただろうかと今更ながらに後悔してしまう俺なのだった。
【今回名前が出た動物】
TEKステゴサウルス(メカステゴ)
カワウソ(カワちゃん)
ケツァルコアトル(ケツァ君)
アルゲンタビス(アルケンA)
αティラノサウルス(ティラノより一回り大きな巨体・遺体)
ユタラプトル
【今回登場した洞窟】
SnowCave(強者の洞窟)