ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第166話

四百二十九頁目

 

 落ち着いたところで改めてフローラに近づきつつ、周りを見回した俺はここが簡易拠点とでも呼べる空間になっていることに気が付いた。

 先ほどから目立っている電灯やその傍にある冷蔵庫などの電化製品だけでなく、よく見れば作業机に旋盤があり一応鉄を焼く製錬炉から物を収納する棚まで乗っかっているではないか。

 それらはフローラの居るケツァ君の操縦席と思わしき頭部あたりに集中していて、先ほどのメガちゃんや今はアルケンAが居るいわば動物を乗せるスペースと思われる場所は臀部の方にあった。

 

 しかもご丁寧に背中に乗せた動物が機材を踏みつけないようそれらの上には屋根と言うか庇のようなものまでついているほどだ。

 大したものを作り上げたと感心しつつフローラに話しかけると、彼女もまた自慢げに俺へと説明を始めた。

 尤もこれを見て想像したのと大して変わらない話ではあったが……要するにフローラはケツァ君の積載能力からして背中に簡易拠点を作れるのではないかと思って、平べったい金属の板を安定して固定させたプラットフォームサドルとでも呼ぶべきものを作ったようだ。

 

 そしてケツァ君の様子を見ながら実際にその背中に岩で作った土台を乗せていき、そうしてできたスペースに必要だと思われる資材と機材を乗せて移動拠点を完成させたのだという。

 その上でまだまだ積載能力に余裕がありそうだと見たフローラは、空いているスペースに動物を乗せての運搬を試してみようと思い、まずは近場に居るメガちゃんを連れて来たのだという。

 ちなみに丁度メガちゃんを迎えに浮かび上がったところで先ほどの肉食達の襲撃が起こったようだが、フローラが飛び立ったことでそっちを追いかけ始めて山肌の拠点からは離れて行ったそうだ。

 

 それでも戻ってきたらまたこうなることは目に見えていたからこそ、襲撃の起こり得ない草食しかいないあの島へと移動しようと言ったらしい。

 まさかこんな空を飛ぶ移動拠点まで作り上げてしまうとは、もはや脱帽と言うほかない。

 尤も俺は移動拠点という響きに、前に筏の上に作った拠点とその末路を思い出してしまいちょっとだけ不吉な予感を感じてしまうのだった。

 

 まあ流石に空にはあんなクソ鯨みたいな拠点潰し専門みたいな奴はいないと思いたいけれど……いるわけないよね?

 

四百三十頁目

 

 ケツァ君の移動拠点は速度こそ遅いが意外と快適だった。

 何せ住居そのものが動いているのと変わらないのだ……これだけの重量を背負って飛べるケツァ君は本当に凄い。

 尤も俺の拙い知識でも、幾ら身体が大きいとはいえ本来の生物としてのケツァ……何たらと言う種族にこんな力があったとは思えない。

 

 恐らくこれも島の管理人が調整した結果なのだろう……つまりはこうして飛行要塞と言うか移動拠点を作らせるのも含めて、向こうの想定内ということなる。

 しかし一体何のためにと少しだけ考えようとしたが、そこでフローラが今度は俺の方の首尾を尋ねて来た。

 彼女との会話以上に大切なことはないと思い、すぐに思考を打ち切り俺は集めた動物とその効能……そしてオウ・ホウさんに頼まれた内容を口にした。

 

 フローラは蜂蜜の取れる熊を連れて行ったことを聞いてえぇ~と残念そうな声を洩らし、豚の治癒能力を聞いてへぇ~と感激したような声を出して、サドルの作成には意気揚々と頷いてくれたが……洞窟攻略への付き添いに付いて話題が進むとうつむいて黙り込んでしまった。

 彼女にこんな顔をさせたくなかった俺はやっぱり断ろうと思ったが、そこでフローラは顔を上げると三つの条件を飲むのなら行っても良いというのだった。




【今回名前が出た動物】

ケツァルコアトルス(ケツァ君)
メガロサウルス(メガちゃん)
アルゲンダビス(アルケンA)
リードシクティス(クソ鯨)
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