四百三十四頁目
フローラは俺と話しながらもケツァ君に指示を出していて、気が付いたときには草食島に辿り着いていた。
俺は落ちないように気を付けつつ、先ほどのスロープ部分から顔を覗かせて着陸できそうな場所へとフローラを誘導する……足元を確認しづらいのはこの機動要塞の唯一の欠点かもしれない。
それと背中の建造物が出っ張るから木が密集している森林地帯への立ち入りも工夫が必要そうだが、その辺りの問題は実際に面してから考えればいいだろう。
あえて思考を振り切った俺はケツァ君が着陸したところでスロープ部分から飛び降りて先に地面の上に降り立つと、後からやってきたフローラに手を伸ばした。
そんな俺の手を取りはにかみながらも嬉しそうに笑いながらフローラは足を下ろそうとして……滑ってしまったのか、滑り台を滑り落ちるようにこちらへと向かってきた。
慌てて怪我をしないようそんなフローラを抱きかかえようと夢中で腕を伸ばした俺は見事にキャッチすることに成功して……何の偶然かお姫様抱っこする形になってしまう。
人一人分の体重がズシリと両腕に圧し掛かるが、意外にも重いと感じなかったのはこのサバイバル生活で少しは鍛えられているからか……それとも抱きしめたフローラがあんまりにも華奢だったからかもしれない。
そんな風に俺の腕の中に収まったフローラはやっぱり恥ずかしそうにしながらも、どこか期待したような潤んだ目で俺を見つめ続けていた。
俺もまたそんなフローラから目を離せなくて、ギュっと抱きしめたまま互いに見つめ合い続けるのだった。
四百三十五頁目
相変わらず草食島の環境は理想的なリゾート地のように見えた。
そしてそこにフローラが作り上げた建物はそれこそ立派な宿泊施設にも見えるほどで、特に浅瀬へと突き出すように作られたデッキからの景色は、海水が月の光を反射して幻想的な雰囲気を醸し出している。
そんな場所でフローラをお姫様のように抱き上げている事実は、何やら俺の気持ちを妙に高ぶらせていった。
フローラもまた同じ気持ちのようで、俺の上着をぎゅっと握りしめると今日はこのまま離れたくないという。
だから俺はフローラを抱き上げたまま家の中へと移動しようとして……そこでどちらからともなくお腹の虫が鳴る音が響いてきた。
おまけにその音を聞きつけたのか、そのタイミングで浅瀬で遊んでいたらしいアルケー君がパチャパチャと水音を鳴らしながらこちらに突っ込んできた。
おかげで正気に戻ってしまった俺たちは、改めて顔を見合わせてクスリと笑ってしまう。
そして俺の腕から飛び降りたフローラはアルケー君を抱きかかえつつ、食事を用意するというのだった。
何だか残念と言うかほっとしたような……いや、やっぱり何となく喪失感があるから俺は残念だったと感じているのだろう。
……もしもあそこでお腹の虫が鳴らなくてアルケー君が来なかったら俺たちは一体どうなっていたのだろうか?
【今回名前が出た動物】
ケツァルコアトルス(ケツァ君)
アルゲンダビス(アルケー君)