四百五十八頁目
どうやら例のメアリー達が居るであろう海岸から打ち上げられたそれは、フローラ曰く彼女が万が一の時に備えてメアリーの居城に置いておいたものか、或いはオウ・ホウさんが作り上げたものだろう。
どちらにしても俺たちを呼んでいることは間違いなさそうだ……だから慌てて出来る限りの速度でそちらに向かいつつ、念のためにフローラには護身用に銃を持たせておく。
しかしそれは杞憂に終わったようで、目的地にたどり着いた俺たちが見たのは砂浜に建てられた無数の篝火の中心で松明を手に少し慌てた様子で俺たちへ合図を送っているオウ・ホウさんだった。
さっき別れたばかりなのにどうしたのかと思いつつ、降り立って話しかけようとしたところで、ふいにフローラまで焦ったような声を洩らし始める。
そんな彼女の視線の先には同じく篝火に照らし出されているメアリーの暮らしている居城があったが、それを見て俺も一瞬だけ何か違和感を覚えた。
しかしすぐにその違和感が二階のベランダというか、窓の外のスペースに常駐しているはずのアルケンCの姿がどこにもなくなっているからだと気が付いた。
更に降り立っていくと下の方の居城の壁に、何やら細かい切り傷のような跡が付いているのが分かった。
尤も傷付いている箇所は俺の腰以下の場所だから大型の動物による攻撃ではないのだろうが、この辺りに石造りの建物に傷を残せるような生き物は居なかったはずだ……赤く燃える怒りを抱いたあの例外のラプトルを除いては。
まさか俺たちが居ない間に襲撃が起きたのか……しかしそれにしては傷跡しかないのは変だし、何よりあの化け物が現れるには早すぎる気がした。
だからこそ何が起きているのか理解できないまま地面へと降り立った俺たちはオウ・ホウさんに話しかけようとしたが、その前に彼は困ったように頭を下げつつ物凄く厄介なことになったから力を借りたいと言って俺たちの手を引いて何故か近くにある自らが暮らしている住居の傍へと移動していく。
その際に何故かオウ・ホウさんの暮らしている住居のドア付近だけが壊されているのが目に飛び込んできて、その事実にさらに驚きながらもそのままオウ・ホウさんに誘導されるまま建物の裏手側に回った俺たちは……言葉が出ないほどの衝撃を受けてしまう。
何故ならそこには見慣れない木で作られたと思わしき檻のようなものがあり、その中で日焼けをしているのか全身が浅黒いとても小さな少年が動物のように丸くなって眠っていたからだった。
【今回登場した動物】
アルゲンダビス(アルケンC)