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色々と話し合った結果として、とりあえずこの子は檻に入れたまま周りを壁で囲い安全を確保した状態で様子を見ることになった。
フローラは檻から出してあげたいというけれど、もしも寝起きを襲われたら幾らオウ・ホウさんでもどうなるかわからない。
だからこればっかりは妥協の仕様がなかったが、代わりにフローラが降りの大きさを改良した上で中にベッドを敷いてそこに寝かしつけることにした。
そして後は彼が目覚め次第すぐにでも対処できるよう……それとメアリーがいつ戻って来ても反応できるよう、彼女の居城内に泊まらせてもらうことにした。
鍵に関してはこの建物を作り上げた本人であるフローラがあっさりと解除して見せてくれて、中にある設備……台所やお風呂場などを案内しつつ最後に何故か複数ある寝室の内、来客用だという部屋に案内してくれる。
どうも彼女は何れ自身の配下が迎えに来るか、あるいは増えるかもと思っているようでそのために必要だと言っていた部屋らしい。
尤も前に俺が会話した所から想定すると、多分フローラをここに住まわせるつもりだったのではと思われるが……とにかく好都合なのでその一人用のベッドにフローラと二人で入り込むのだった。
……流石に人の家だから自重しなければと思ったけれど、やっぱり眠るまでの間に色々とイチャイチャしてしまったのはメアリーには内緒にしておこう。
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心地よい目覚めを迎えた俺たちは、すぐに外へ……出る前にマナーとしてお泊りの跡を綺麗にしておいた。
そして改めて外へ出たところで、早速咆哮染みた声と共にガタガタと何かを揺らすような物音が聞こえて来た。
どうやらそれは昨夜に作り上げた住居の中で例の子供が暴れている物音のようで、それを聞きつけたであろうオウ・ホウさんもやってきて三人揃って檻の前へと向かう。
果たして檻の中では例の子が動物のように四つん這いになった体勢で、俺たちを睨みつけながら唸っていた。
しかしその呻き声は時折『出せ』とか『敵、倒す』だとかの片言の言葉に聞こえてくる。
尤も当の本人は意識して意味のある言葉を発しているようには見えない……恐らくはいつも通り左手首にある鉱石か何かが強引に彼の意志を翻訳してくれているのだろう。
その様子からしてこの子は会話という概念の無い場所で育ってきたように思われるが、どんな時代のどんな場所で育ったとしても言葉を使わずに生活している人間が居るとは思えなかった。
そんな風に遠巻きに眺めている俺達男性陣を差し置いて、フローラがさっと前に出るとその子に水と食料を差し出しながら敵じゃないと何度も言い聞かせようとする。
最初こそ取り付く島もなかった子供だが、これだけ暴れているだけあってお腹が減ってきたのか、少しすると不安そうにこちらを見つめながらも渋々といった様子で食料を受け取り始めた。
そしてフローラの手料理を一口齧り……パッと目を輝かせると猛烈な勢いで食し始めるのだった。
どうやらお気に召した味のようだ……そんな子供をフローラはやはり慈愛の笑みで見つめながら次から次へと食料を差し出し続けるのだった。
……考えてみれば初めて出会ったフローラも俺が焚火で焼いていた霜降り肉に食いついていたなぁ……そう思うと俺もまた何やら妙な親近感を覚えるのだった。