四百六十三頁目
お腹が膨れたことで少しは落ち着いたのかその子は暴れるのを止めると、俺たちを代わる代わる見回してきた。
そんな彼に話しかけるとまずご飯をくれたフローラには甘えるような態度を取り、また何故かオウ・ホウさんには警戒しつつもやはり従順に返事をして見せた。
ただ俺だけは未だに殺気……とまではいかないが敵意を全開にして睨みつけてきている。
この差は何なのかと不思議に思ったが、色々尋ねてみて片言ながらも応える彼の言葉をまとめていくうちに少しずつ分かってきた。
まず彼は信じられないが本当の野生児のようであり、何でも幼い頃に村が乱暴者の集団に襲われて家族を失い、一人で自然の中で生き抜いてきたという。
そして動物を狩りながら必死に生きていたが、そのうちに同じような境遇の人間が集まって小さな集団になったそうだ。
そうして暮らすうちに自然と自分より力が強く沢山狩りが出来てご飯を持ってこれる奴に従うというルールも出来たそうだ。
だからこそこの子は自分にご飯をくれたフローラに懐き、また実際に自分を組み敷いて気絶させるほどの強さを見せたオウ・ホウさんにも頭を下げているらしい。
そして何もしていないのに彼らと肩を並べている俺は軽蔑の対象なのかもしれない……困ったものだ。
ちなみに彼の名前は聞き取りにくかったがマァと言うらしい……たまたま言葉の話せる奴が仲間に加わった際に、皆のリーダーとして束ねていた彼の行動を見るたびにそう言っていたからだそうだ。
それはともかく、この調子では彼がどの時代から来た人間か把握するのは難しそうだ……まして科学文明をどう理解させたらいいものか……また面倒なことになりそうだ。
四百六十四頁目
一通り彼に事情を聞き終えると、今度は一転して向こうがこの場所がどこなのかと仲間はどこにいるのか尋ねて来た。
何でも彼の記憶では、燃える炎を持ったピカピカした集団……恐らく松明を持って鎧か何かを着ている軍人がやってきて追い回された果てに気が付いたらこの島に居たらしい。
だから最初は篝火に照らされたメアリーの居城を見てあの場所に仲間が捕まっていると思い攻撃して、全く歯が立たないうちにお腹が減ったから一旦食料を探そうとしてオウ・ホウさんの暮らしているあの家に押し入ったらしい。
ようやくメアリーの居場所以外のことが判明したが、マァのいうことが正しいのならば彼がこの島に来た時点でもうあの居城にアルケンCは居なかったらしい。
やはり彼女が居なくなったから彼はこの島にやってきたようだが……本当に彼女はどこへ行ったのだろうか?
そしてもう一つ、これからこの子をどうすればいいのか……問題は山積みだった。
とりあえずこの島について俺たちが知っていることを伝えていくが、やっぱり今までで一番手ごたえがない。
この調子では共に行動するのは難しそうだが、かといってこんな危険な島に野放しにするわけにもいかない。
幾ら元の場所で野生児として暮らしていたとしても、流石に恐竜の跋扈するこの場所でやっていけるとは思えないからだ。
本当にどうすればいいか悩んでしまうが、そんな俺たちにフローラはとあることを提案してくるのだった。
【今回名前が出た動物】
アルゲンダビス(アルケンC)