四百六十五頁目
フローラの提案に従う形で、一旦この場にオウ・ホウさんだけを監視役として残ってもらったうえで山肌の拠点へと向かう俺達。
そこからあの子が暴れても取り押さえられる強さの動物を護衛代わりに連れてくる代わりに、あの子を自由にしてあげようというのだ。
そしてその後は、オウ・ホウさんと変わる形でフローラがその場に残り、俺たちが洞窟を攻略している間にあの子の面倒を見て教育してあげるつもりらしい。
少しばかり不安ではあるが、確かにあの拠点に居るティラノと近くを守れる豚辺りを連れてくればあの子がどれだけ乱暴だろうとも流石にフローラが危なくなることはないだろう。
何より彼女自身がそう望んでいるし……俺の耳元でそっと将来に備えて子育ての予行練習をしておきたいなどと言われてはもう逆らえるはずもなかった。
尤もその発言が意味しているのは動物たちの子供の面倒という意味だと思うけれど……いや、未だに顔が赤くてしかも上機嫌だからやっぱり違う理由かもしれない。
……しかし山肌の拠点までたどり着いたところで、その目論見は少しだけ雲行きが怪しくなった。
何故ならばそこに居る動物たちが皆、俺たちと別れた時以上に傷だらけで……その周りには大量の肉片とそれを貪りながら仲間の傷を癒している豚の姿があった。
この様子では恐らく俺たちが居ない間にまた襲撃があったのだろう……それが意味することに気付いた俺たちは改めて上空から拠点を見回して……すぐに仲間達と混じって死肉を貪っているアルケンCの姿を見つけてしまうのだった。
四百六十六頁目
アルケンCに乗ってきたであろうメアリーの姿を探し求めて拠点内を探索していくが、畑は当然としても何故か居住区にも工房内にも彼女の姿はなかった。
尤もシャワールームが使われた形跡がある辺り、間違いなくこの場所に入るはずなのだが……そう思いつつ最後に残った二階の孵化部屋へと近づいたところで、中から妙な異音と共に甲高い声が漏れ聞こえていることに気が付いた。
慌てて立ち入ったところ、果たして腰を抜かした様子で尻もちをついているメアリーとそんな彼女を不思議そうに眺めるタヴィちゃん……そしてそんなメアリーにすり寄る小さいティラノの姿があった。
目の前の光景が理解できず固まる俺に対して、フローラはすぐに状況を理解したようで、それでももう産まれたのかと困惑気味な顔で呟きつつメアリーとティラノの子供の元へと向かって行った。
どうやらあの小さいティラノは前に持って帰った卵から孵った子供のようだ。
よくぞまあ俺たちが居なくて温度管理もしてなかったのに無事に生まれたものだと不思議に思うが、そこでこの孵化部屋のあちこちに異音を発する電源に繋がれた小さく四角い箱があることに気が付く。
近づいてみると、その箱の一面から温風が出て居るのがわかる……これはひょっとしてエアコンなのだろうか?
そう言えば前にフローラはもう温度管理を気にする必要はないと言っていた……確かにこれがエアコンならば自動で温度調整してくれるのだから納得がいく。
しかしまさかこんなものまで作り上げてしまうとは……出来ればケツァ君の背中にも付けてほしいものだが、フローラがやらないということは何か訳があるのだろう。
何かしらの理由から無駄だと思っているのか……或いは単純に素材が足りなかったか……前にセメントが足りないと言っていたし,恐らく後者なのだろう。
【今回名前が出た動物】
ティラノサウルス
ダエオドン(豚)
アルゲンダビス(アルケンC・タビィちゃん)