四百六十九頁目
ちょうど拠点へと戻ってきたところでフローラ達もお風呂を終えていたのか、何故かティラノの子供と共にケツァ君の背中へ乗り込んでいた。
そこへ俺も連れて帰ってきたサーベルタイガーを乗せると、フローラと手分けして回収してきた金属鉱石を製錬炉へ入れつつ、生成し終えていたインゴットとガソリンを回収する。
もちろんメアリーはケツァ君の背中に乗ったままで手伝おうとはしなかったが、意外にも騒いだりすることなく大人しく子供のティラノの相手をしていた。
その間にフローラはこそっと、メアリーから聞いた話を伝えてくれた。
何でも彼女は……一人で居城に籠っていて寂しくなったのだという。
また元々暮らしていた場所では常に誰かしらが傍にいたこともあり、たった一人で自分の身の回りのことを済ませるのも大変で、やはり使用人ぐらいは傍に置いておかねばと思ったようだ。
考えてみれば確かに最後にあった時、メアリーは妙にフローラを自分の傍に置けと主張していた……あれは自分のお世話係だけではなく話し相手として求めている面もあったのだろう。
しかも次の日は俺達全員揃って洞窟探索へと出かけて、誰一人メアリーの傍に残っていなかった。
そんな状況に耐えられなかった彼女は俺達の後をそっと追いかけようとしたようだ。
何だかんだで洞窟探索の話し合いの場には立ち会っていた彼女は、うろ覚えながらも俺達がいるであろう場所に向かって飛んでいったそうだ。
しかし自ら動くという行為に成れていなかった彼女はアルケンCを操るのに必死で、またコンパスも無い状態で移動したがために迷ってしまったらしい。
それであちこち飛び回り、たまに着地しては変な生き物に襲われそうになって逃げだして……そんなことを繰り返している間にどんどん辺りは暗くなっていった。
仕方なく彼女は元の拠点へと戻ろうとしたそうだが、余り地図を見ていなかったメアリーはどっちに進むべきかもわからなくなってしまったのだという。
そのうちに完全に日が暮れてもうどちらに進んでいいかもわからなくなったメアリーだが、そこで妙に光り輝く場所を見つけたのだという。
真っ暗闇の中に残るよりはマシだと判断した彼女は、オベリスクやカプセルより近くにあったそこを目指し……そしてこの山肌の拠点に辿り着いたそうだ。
……そう言えばこの場所の電灯は目印になるからと付けっぱなしだった……篝火と違って、あれは遠くまで目立つから見えるわけだ。
とにかくそう言うことで何とかこの場所を見つけたメアリーだが、余りにも危険な動物が集まっていることに驚きつつも、アルケンCが警戒するどころか落ち着き払っていたから多分俺たちの拠点なのだろうと判断したようだ。
それでも真ん中に降りるのは怖いから、二階部分に着地して孵化部屋と知らずそこに入り込み……卵とそれを温めているタヴィちゃんを見つけたという。
最初は驚いたがアルケンCと同じ動物が卵を温めている様子から、これなら安全だろうと確信したメアリーはそこで軽く体を休め……すぐに退屈になり卵へと興味を示した。
身体を近づけて耳を当てて中から感じる生命の鼓動に感動して、それに聞き入っていた……ところで外から凶悪な咆哮と動物たちが争う音が聞こえて来た。
恐らく俺たちと交代するようにメアリーが来たことで襲撃システムにより肉食が襲ってきたのだろう、その恐ろしい咆哮と激しい振動を伴った戦闘音に怯えながらもメアリーは何故か卵だけは守ろうと必死になって抱き着いたという。
すると何故か妙に卵の鼓動が早くなっていったかと思うと、パキリと卵の表面が割れて中からあのティラノが生まれて来て……どう見ても肉食なのと、何より温めていた生き物との違いに驚き尻もちをついて……呆然と見つめている中で気が付いたら俺たちが来ていたのだという。
その話を風呂場に居る時に俺には内緒だということで聞いていたフローラは、メアリーも少しはこの島の状況を理解してくれたから、これからはもう少し俺たちの言うことも聞いてくれるはずだというのだった。
……考えてみればやっぱりフローラも最初の襲撃を乗り越えてからどんどん成長していった……俺だって目の前でドーちゃんとエーちゃんがやられるのを見てから……。
オウ・ホウさんのような戦場に成れている人間ならともかく、安全な場所で暮らしていた奴がこの島に適応するにはきっかけが必要なのかもしれない。
【今回名前が出た動物】
ティラノサウルス
サーベルタイガー
ケツァルコアトルス(ケツァ君)
アルゲンダビス(アルケンC・タビィちゃん)