ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第202話

四百九十二頁目

 

 豪雪地帯に入る前に毛皮の服へと着替える俺達……ちょっとだけ思うところはあったがお昼までに戻らなければいけないので色々と我慢しながら、改めて北西の端に作った簡易拠点へと移動する。

 初めてこの豪雪地帯へと足を踏み入れたフローラは、落ちないよう注意しながら下を見下ろして感激したような声を洩らしていた。

 確かに一面の銀世界をマンモスが闊歩して、そこを狼が走り抜けていく光景は中々幻想的で俺も初めて見たときは同じような反応をしたものだ。

 

 更にフローラはあちらこちらに見える金属鉱石や水晶、原油に黒曜石の塊を見つけては感激した様子で俺に語りかけてくる。

 何でもそろそろ南の海岸にも襲撃イベントが再発生しそうだから、一旦この場所に皆で移住するのはどうだろうかというのだ。

 個人的にはフローラと二人きりの生活も捨てがたいが、彼女としては素材に囲まれたこの場所で新しく色々な設備を整えて行きたいのだろう。

 

 そして実際にフローラは貴重な素材の確保を俺に任せて、いつの間にかケツァ君に積み込んでいた石の土台や壁を作るための素材を使い簡易拠点の改善を始めてしまう。

 こうなってはもう止めても仕方がない……俺はケツァ君を簡易拠点の中へと残し、アルケンAに乗り換えるとこの辺りに居る動物をとにかく崖下へと落としこんでおくことにするのだった。

 

四百九十三頁目

 

 ある程度近くから動物を一掃したところで素材の回収を始めていく。

 尤も金属鉱石や水晶は個々でなくても取れるから、原油と黒曜石に真珠……そして有機ポリマーを中心に取っていくことにした。

 フローラに気付かれないよう離れ小島に向かいペンギンを片っ端から撲殺していく……その試合に刃物で解体するより鈍器で叩く方がより有機ポリマーが回収できることに気が付いた。

 

 だから即席で作った棍棒を片手にペンギンを追い回す俺……完全に傍から見たら蛮族だろう。

 何故か野生にしては珍しく子供のペンギンも歩いているが、流石にこれに手を出すのは躊躇われて成体の個体だけを撲殺して有機ポリマーを可能な限り回収してまわる。

 果たしてある程度の有機ポリマーが集まったところで一息付きつつ顔を上げて……そこでバサバサと大きな羽ばたき音と、頭上に影が差していることに気が付いた。

 

 いつの間にかケツァ君に乗ってフローラが追いかけてきていたようだ……そして彼女は棍棒を持ってペンギンを追い回していた俺を無言で見つめているのだった。

 ……こ、これは不味すぎる……まさかこんなことで嫌われたりはしないだろうけど……何やら不安で胸が痛んで仕方がない。

 そんな怯えている俺の元に降り立ったフローラは静かに近寄ってきて……優しく身体を抱きしめて頭を撫でてくれるのだった。

 

 耳元で辛かったでしょ、ごめんねと言いながら……どうやら今までも俺は有機ポリマーに関連する話題を口にする際は、いつも苦しそうな顔をしていたらしい。

 だから何かあるに違いないと思っていたようで、その上で今まで何も聞かないでいてくれたようだが、この状況を見て自分のお願いの為に無理して可愛い動物を倒していたと知って……こんな苦しい思いを俺にだけ押し付けていたことを謝罪していたのだ。

 ……フローラも可愛い動物が好きなはずなのに、それを虐殺している俺を責めるどころか気遣う言葉をかけてくれるなんて……本当に俺には勿体ないぐらいの彼女だ。

 

 絶対に大切にしてあげようと改めて誓いながらフローラにもう気持ちは落ち着いたからと告げてあげると、彼女もまた顔を上げて俺を見てニコリと微笑んでくれた。

 その上で俺の回収した有機ポリマーを見て……時間経過で外側から固まって行きどんどん使える部分が減っていくから、今のうちに大目に回収しておこうと言い、俺にだけ負担をかけるわけにはいかないと辛い顔をしながら棍棒を受け取り自らペンギンを追い回すのだった。

 

 しかも途中からは見ている俺を苦しまないためにか笑顔すら浮かべ始めて……決して両手に抱えている有機ポリマーに目がくらんでいるわけではないだろう……多分。




【今回名前が出た動物】

マンモス
ダイアウルフ(狼)
ケツァルコアトルス(ケツァ君)
アルゲンダビス(アルケンA)
カイルクペンギン(ペンギン)
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