四百九十七頁目
慌てて動物用の宿舎に飛び込んだ俺が見たのは何やら言い争っているメアリーとオウ・ホウさんの姿だった。
あのオウ・ホウさんが声を荒げているところを初めて見たから少し驚いてしまう。
しかしその言い方はどちらも何やら子供の我儘染みていて……てっきり最初はメアリーがまた何か無理難題を言ってついにオウ・ホウさんを怒らせたのではと思っていたが、どうやら違うらしい。
それでもこのまま仲間同士で争われてはと思い仲裁を試みたところで、二人揃ってこちらに気付き詰め寄ってきた。
そして二人同時に……どっちがあの生き物に相応しいと思うと叫び、小屋の一角へと俺を引っ張っていく。
果たしてそこではマァが新しく仲間にしたと思わしき生き物……ゆ、ユニコーンっ!?
ま、まさかっ!? いやでもあの一本の角が生えた白い馬体はどうみてもっ!! だけどどうしてっ!?
信じられな……考えてみればこの島で起きている出来事全てが信じられない出来事のオンパレードではないか。
しかしそれでもオベリスク関連以外で想像上の生き物が出て来るとは想定外だった……ひょっとしてもっと細かく探せば野生にもドラゴンとかワイバーンとか紛れてたりするのではないか?
そんなことを思いながらマァに尋ねてみると、何でも緑のオベリスクが見える辺りを探索していた際に普通に歩いていたから捕獲しておいたらしい……尤も物凄く大変だったようだが。
何でも普通に眠らせても餌を食べないから、最後には無理やり飛び乗って起きている間に餌を与えて強引に食べさせて懐かせたそうだ……まさかそんなやり方があるとは、それにも驚いてしまう。
尤も同じことを俺がやったら振り落とされるのが関の山だろう……野生児のマァだからこそできたのだろう。
感心している俺をメアリーとオウ・ホウさんが両側から引っ張り、改めてどちらが騎乗に相応しいか尋ねて来る。
二人ともこれが普通の生き物ではないことは悟っているようで、メアリーは神聖なるユニコーンに騎乗が許されるのは名誉ある地位にある自分だけだと叫んでいる。
それに対してオウ・ホウさんは騎兵として活躍したこともあり馬の扱いは自分が一番慣れていると言い……その上で翼こそないがこれは伝説にある応竜か麒麟に違いないと叫びながら興奮した様子でぜひ乗ってみたいのだと身を乗り出して主張するのだ。
おまけに出来得るならば連れて帰って上司に献上したいとも言っていて……即座にメアリーも妾が国に連れ帰り家族と家臣に自慢すると叫び返し……君たちは玩具を取り合う子供デスカ?
まあ正直なところ気持ちはわからなくもない……俺もちょっと乗って見たくて、冗談半分にじゃあ間を取って俺がと呟いてみて……物凄い目付きで睨みつけられて慌てて首を横に振るのだった。
一歩も引かない様子の二人に困っていた俺だが、そこへ入り口から出来たぁと嬉しそうに叫びながらフローラが入ってきた。
余計に混乱しそうだと思いながら彼女に振り返ると……果たしてフローラもすぐにユニコーンに気付いて、感激したような声を洩らしながら近づいてくる。
……あれ? そう言えばユニコーンって確か純け……汚れ無き乙女にしか懐かないとか……もしもそれが事実だとしたら……や、ヤバい色々とバレ……っ!?
【今回名前が出た動物】
ユニコーン