五百十一頁目
オウ・ホウさんと相談しながら先の方を照らしてみると、少しだけ通路が広くなっているのが分かった。
とりあえずそこで位置を入れ替えて狼と豚を近づけて、可能な限り狼たちの傷を癒してもらう。
その間に俺達は進むべきか戻るべきか話し合っていたが、そこでふと先の方からカエルの鳴き声が聞こえてくる気がした。
一瞬、洞窟の中に野生のカエルが居るなんて珍しいと思った俺だが遅れて先ほど崖から落ちたカエルのことを思い出す。
ひょっとしてこの先はあの崖の下に繋がっているのではないか……そう推察した俺はオウ・ホウさんと比較的傷の浅かった狼二匹を連れてカエルの鳴き声が聞こえてくる方を目指し、右側の壁に沿って進んでいった。
すると思った通り、進んだ先にはサドルのついているカエルが俺達を見つけるなり親し気に駆け寄ってきたではないか。
もう少し周りを見渡せば松明も落ちている……やはりこの場所はさっきの崖下になるようだ。
つまりは他の動物たちもあの崖から滑り落ちて貰えばこの先に連れていくことはできる……ただこちら側から崖を登るのは不可能に近いため、連れて戻ることは出来なくなってしまうだろう。
進むべきか戻るべきか、改めて俺はオウ・ホウさんと向き合って話し合い……狼の傷が癒えるのを待ってから、このカエルを伴って進める限り進んでみようという結論に至った。
仮に戻るとしてもこのカエルは連れて帰れないから無駄死にさせることになるし、また戻って小さいサイズの動物を用意しようにも、この先にもまた動物が入りにくい空間があるかもしれないのだ。
それを可能な限り確認してから戻った方が良いと考えたのだ……そうすればこのカエルのことも有効利用もできるのだから。
五百十二頁目
豚に生肉を与えながら治療能力を使ってもらい、狼たちの傷が癒えたところで再び進み始める俺達。
とにかく可能な限り右側の壁に沿って進むと、再び小さい崖のある空間に躍り出た。
尤も今回は下が見える程度で飛び降りても大丈夫そうだったが、左の壁沿いに緩やかな斜面が続いていたので素直にそこから降りていく。
すると途中で狼が何かを嗅ぎつけたかのように鼻を鳴らしたかと思うと、目の前に壊れかけた廃墟が現れた。
更に狼はその廃墟のある場所に向かって吠えるような仕草をして見せて、果たしてそこにいつもの日記が収められている箱を見つけた。
人間の匂いをかぎ分けたのか、或いは人工物の匂いに困惑したのかはわからないが、意外な能力に驚きつつも今は中に収められている日記を読むことにした。
中を読むとこれはヘレナ氏が書いた物のようだが……いつもとは違い、日記というよりも生き物の生態を書いた学術書の断片のような感じだった。
確かヘレナ氏は学者だったらしいが、どうやら生物学者であったようでこうしてこの島の生き物の生態を調べて書き記してあったようだ。
それがなぜこんな形で断片として一ページだけが収められているのか不思議で仕方がない……もっと言えば危険な洞窟内に住居と思わしき跡地があるのも……。
尤も先人たちには先人たちの考えがあるのだろうから気にしても仕方がない……案外、洞窟攻略のためにベースキャンプでも設営していたのかもしれない。
ちなみに今回見つけたページの内容は、前に一度手渡しで餌を上げて仲間にしてあげたことのあるトロちゃんこそリストロサウルスについてだった。
撫でてあげると周りを鼓舞してやる気を促す的なことが書かれていたが、確かに前に撫でてあげた時可愛らしく反応していたような気がする。
まあだからなんだという気がしなくもないが……どちらにしてもあんな体の小さい子では、生活の役に立つ可能性は少ないだろう。
何よりも危険な洞窟内で悠長にしては居られない……そう思って早々と読むのを切り上げて、更に先へと進んでいくことにした。
【今回名前が出た動物】
ベールゼブフォ(カエル)
ダエオドン(豚)
ダイアウルフ(狼)
リストロサウルス