ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第214話

五百十七頁目

 

 南の海岸に戻ったところで、メアリーが居城のバルコニーらしき場所から俺達を呼び止める声が聞こえて来た。

 軽く周りを見回してケツァ君がまだ戻っていないことを確認しつつ、彼女の元へ赴くと困ったような顔で相談を持ち掛けられてしまう。

 何でも俺達が去った後に、やはり襲撃が起こったようで無数のラプトルが襲ってきたのだという。

 

 尤もそいつらでは壁は壊せないし、何よりテリ君の敵ではないのであっさりと一蹴出来たのだが、今度は少し離れたところでスピノが暴れ始めているのを目撃してしまったというのだ。

 流石にあのサイズが相手ではテリ君でも勝てるか分からないし、かといって子供達を残してこの場を放棄するのも躊躇われるとかで、どうにかしてくれぬかというのだ。

 少し前までならら高圧的に命令していたはずだが、メアリーも俺達を仲間だと認めて少しずつ気を許してくれているようだ。

 

 尤も高品質サドルを付けているテリ君は一対一ならティラノにだって勝ててもおかしくない強さなのだが……それでもせっかくのスピノなのだから捕獲したいところではある。

 何より今のところはまだ距離があるから、放っておいても問題ないだろう。

 それよりもこの場所に長く留まる方が危険だ……だからメアリーにはケツァ君が戻ってきたところで皆を連れて移住してもらうように提案すると、子供たちの安全のためならばと素直に引っ越しの支度を始めてくれた。

 

 ただ問題はどこへ移住するかだが……一番安全なのは草食島だろうけれど、あそこは俺とフローラが初めて結ばれた場所だからかどうしても二人だけの場所にしておきたかった。

 そう思って少し狭いけれど山肌の拠点へと案内しようとしたところに、ケツァ君に乗ったフローラが戻ってきた。

 しかしそこに捕獲してきたはずの動物は愚かマァの姿すらなくて困惑するが、道中でスピノが暴れているのを見て来たらしいフローラは俺達の元に来るなり移住を口にしてきて……ちょうど今その話をしていたことを告げると、打ってつけの場所があると俺達を笑顔で誘うのだった。

 

五百十八頁目

 

 早速移動しようとしたところで、オウ・ホウさんは近づくスピノを見て、捕まえておけば何かの役に立つかもしれないと言いだした。

 そんなここに残るつもりのオウ・ホウさんに別れを告げて、俺達は三人で子供の動物と卵を乗せて残りの動物のお世話を任せてこの場を飛び立った。

 俺より戦いに成れている彼なら引き際を誤ったりはしないだろうし、いざとなれば彼が自分の移動用に使っているプテラで自主的に避難するだろう。

 

 だからオウ・ホウさんのことは全く心配していなかった……むしろ気になるのは、これから向かう所であった。

 フローラ曰く、例の豪雪地帯にある素材が沢山取れる場所に作っておいた簡易拠点を改良したと言うが、それこそあんな寒くて危険な場所でゆっくりと落ち着いて休めるのかは不安だった。

 尤もその辺りのことをフローラが見落とすとは思えないから安心して良さそうだが……詳しく話を聞こうにも彼女はケツァ君の背中にある化学作業台を含めた様々な設備を使って忙しく動いていて声を掛けづらい。

 

 それでも豪雪地帯に入る直前で俺達に毛皮の防具を渡してくれて、俺はフローラやメアリーと共に着替え……られるはずもなく、片隅に小さく作られていた更衣室に二人が入っていくのを見守ることしかできなかった。

 少し寂しさを覚えながら、俺は一人虚しくケツァ君を操縦し続けるのだった。

 

 ……そう言えば今晩は俺達もメアリー達と一緒に泊ることになるのだろうか……もちろんそうなればフローラとのイチャつきはお預け……ちょっと残念だが仕方ないかな。




【今回名前が出た動物】

ケツァコアトルス(ケツァ君)
ユタラプトル
テリジノサウルス(テリ君)
スピノサウルス
ティラノサウルス
プテラノドン
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