七十三頁目
果たして装置に近づいた俺は、空に浮かぶ柱のような建造物が赤い光を地面にある装置へと放っていることに気が付いた。
そしてその光を受けている装置の中央は出っ張っていて、まるでこの装置全体の操作盤のように思われた。
しかしこれにはボタンが一つ付いているだけで、どうやって操るのかそもそもこれが何をするものなのかすらさっぱり分からない。
一応右手でボタンを押してみても何も変化はなく、少しがっかりしながらもさらに周りを調べていく。
するとボタンの近くに四カ所の不思議な形をしたくぼみを見つけた。
ひょっとしてここに、何かをはめ込んで作動させるのだろうか?
しかしいったい何を入れればいいのか、そもそもこれは何のために存在するのか……この島の不思議と何か関係があるのだろうか。
知りたいことは何もわからない……ここまで命がけで来たというのにこれはあんまりだ。
そう思い未練がましく何度もボタンを押して、意味もなく左手を伸ばしてところで変化は訪れた。
不意に左手に付いている鉱石が反応を起こしたのだ、まるで共鳴するように光だし……そして空中にホログラム映像を映し出した。
そこには未知の巨大な生物のフォルムが映し出されていて……だけど俺にも一発で正体がわかってしまう。
トカゲのような身体から翼が映えているその力強い姿は、空想の世界でしか見られないドラゴンという生き物そのものだった。
七十四頁目
装置を調べているうちに左手首に埋め込まれている鉱石と同じ物質なんじゃないかと思えてきた。
そしてこれらは鉄でできたピッケルで叩いても傷跡すらつけることができないほど固いのだ。
こんなものは俺の知る限り地球上には存在しない物質だと思う。
いやそれだけじゃない、絶滅動物を生き返らせる技術も自然の素材を無数に成長させる方法だって俺の時代にはあり得ないテクノロジーだ。
もちろん先ほど見たドラゴンのホログラムもだ……最初の頃俺は権力者が密かに開発して隠ぺいしているのではと思ったがこれだけ様々な分野の技術を独占して秘匿することなど不可能だろう。
そして俺は、ここに来るまでの間考えないようにしていたある可能性を思い出す。
この島で俺が目にしたのはその全てが絶滅動物だった、陸も空も海も……俺という人間を除いたすべてがだ。
目を覚ましたばかりの時は、だからこそ俺は何かの陰謀か実験に巻き込まれた第三者だと思っていた。
だがもしもその前提からして間違っていたとしたら……本当にこの島には絶滅動物しかいないのだとしたらどうだ。
仮に優れた技術力を持つ宇宙人か何かが来て、地球の生態系について調べて絶滅動物を生き返らせるプロジェクトでも初めて……この島を作ったとすれば一応辻褄は合うのだ。
そしてその際に同じように絶滅していた……人間という種族の中からたまたま俺を生き返らせたのだとすればやっぱり辻褄は……だけどならば俺の持っている記憶は何なのだろうか。
それにこの島で暮らす生き物は同じ種族が何匹もいる……繁殖を考えれば当然だが、だからこそ一人しかいない俺はやはり特別なのではないだろうか。
何より左手に埋め込まれた鉱石だ、この島で生きる生き物の中でこれをつけている奴は一匹も見ていない。
やはりこの推論は間違っているのだろうか……間違っていてほしい。
それよりはまだ権力者に弄ばれているほうが遥かに希望はあるのだから。