五百三十一頁目
思っていた以上にこいつは好戦的で、矢を放つなり空に居て届かないはずの俺達に咆哮を上げて殺意を込めた眼差しを向けて来る。
おかげでケツァ君に乗ったまま移動しても素直についてきて、あっさりと落とし罠風に仕立てた建物の外壁に付けたスロープを伸ぼり中へとはまり込んだ。
もちろんすぐに脱出しようと壁を齧り始めるが、流石に金属で出来ている壁には文字通り歯が立たないようだ。
……壊される可能性も考えていたからここだけは緊張の一瞬だったが、上手く行った以上はもう何も問題はない。
後は皆で落ちないように気を付けながら麻酔を打ち込むだけ……唯一飛び道具というか、武器を扱えないといったメアリーには代わりに望遠鏡であの肉食や壁に異常が発生しないか見守ってもらうことにした。
その上で早速麻酔矢と麻酔弾を撃ち込んでいくが……これがまた全然眠らない。
数百本以上の麻痺矢と麻酔弾を撃ち込んだのに全く眠る気配を見せなかった時は、ひょっとしてこいつは仲間にする方法が違うのかと疑問が思い浮かんだほどだ。
しかしあの赤いオーラを纏った特殊個体とは違い、時折眠気に逆らうように瞼をピクつかせているとメアリーが伝えてくれる。
だからとにかく後のことは眠らせてからにしようと更に麻酔を叩き込んでいくと、そのうちにようやく他の動物と同じように逃げるような仕草を始めた。
これはもう少しで眠る合図だ……と思ったのだが、そこからもまた百発以上の弾を消費させられてしまった。
本当に規格外な生き物だが、それでも流石に耐え切れなくなったのか最後には大きな音を立ててその場に崩れ落ちたのだった。
……念のため少しだけ様子を見て、確実に起きないと確信してから餌を与えて見よう。
追記
何故この慎重さを最後まで持てなかったんだろうか……どうして寄りにも寄って最初にフローラを……。
五百三十二頁目
しばしの間、様子見して完全に眠りに落ちているのを確認した俺達は広めに作ってあった罠の内部に降り立った。
そしてまず餌をやろうとして……余りにも歯が鋭すぎて危険だと気が付いた。
金属の壁を齧っていた歯こそかなり削れてボロボロになっているが、他は僅かに身体が触れただけで血がにじみ出てくるほどだ。
これでは下手に餌やりをしたら、少し間違えただけで簡単に腕ぐらい落ちてしまいそうだ……先に歯を削っておこう。
もしも歯が修復されなかった場合は、仲間になった後の攻撃で相手を噛み付きで出血させられなくなるが、この巨体のパワーからすれば些細な差でしかないだろう。
それよりも俺達の身体に欠損が出るほうがこの先のサバイバル生活を送る上で支障がでるだろう……流石に幾らこの島の素材で作られたロックウェル氏のメディカルブリューが優秀でも欠けた部分までは回復しないだろうから。
そう判断して皆で協力して何とかこの恐竜の歯を削り終え……な、なんだこいつ急に身体が震……っ!?
追記
くそっ!! この時点で逃げ帰っておけばっ!! 何で俺はっ!! これが最後のチャンスだったのにっ!!
【今回名前が出た動物】
ケツァルコアトルス(ケツァ君)
ギガノトサウルス(超巨大な肉食)