五百六十四頁目
新しい素材を求めて新生物であるウミサソリとアンモナイトを狩ろうとしたところで、ふいに海底の凸凹する岩礁から信じられないほどの巨体が姿を現した。
ずんぐりむっくりとして、まるで鯨のようにもみえるが同時にワニを始めとした爬虫類にも見えるそいつは……某映画でも活躍した海の支配者、モササウルスだろう。
圧倒的な質量からくる威圧感はメガロドンと比べてもなお遥かに上を行く。
流石にこいつが相手では幾らサメの集団でも勝てるかは……いや、あの出血を思えば倒せないことはないだろう。
ただ戦いは必ず派手なものになるだろう……その際に他の生き物まで襲ってきて乱戦に持ち込まれたらシャレにならない気がする。
この島で油断も過信も厳禁だ……それはもう痛いほどわかっている。
だから新素材の入手を諦めて浮上を始めたところ、モササウルスは俺達を追い払ったことでいい気になったのか堂々とした仕草でアンモナイトとウミサソリへと襲い掛かった。
少し勿体なかったかもしれない……と未練がましく眺めている俺の目の前で、モササウルスはアンモナイトから変な汁を掛けられていた。
すると途端に周囲にいた生き物たちが攻撃的になり……たまたま近くを泳いでいたあの温厚なイルカまでもがモササウルスに挑みかかっているではないか。
どうやらあのアンモナイトが吐き出したものは一種のフェロモンのようなもので、生き物の本能を刺激して攻撃的にさせる効果があるようだ……もしも俺が手を出していたらどうなっていたことか……。
やはり慎重に行動して正解だった……そう思いながら巻き込まれないよう距離を取っている俺の前でモササウルスは襲ってくる奴ら全てを返り討ちに……な、なんだあのモササウルスの身体を拘束した細長い触手のようなものはっ!?
五百六十五頁目
やはり深海という場所は危険極まり無い場所だったようだ……目の前で倒されてしまったモササウルスを捕食している巨大すぎるイカを見て改めて確信する。
ダイオウイカですら比べ物にならないであろう、まるで神話に出て来そうなほどの巨体を持つイカは身体から伸びる触腕であのモササウルスの身体すら巻き取り拘束して身動きを取れなくした状態で一方的に屠ってしまったのだ。
まさかモササウルスですら捕食される側だったことに、流石の俺も驚きを隠せないが……同時にこの島の管理人はこれぐらいやってくるだろうとは思っていた。
近海で仲間にしたサメだけで調子に乗って行動するような人間をこの島の主は認めたりしないだろうから……あのまま俺が引き下がらず新素材への欲求のまま残っていたら、あの触腕で背中に乗っている生き物ごと拘束されて逃げる暇もなく殺されていたかもしれない。
だけど一度フローラという大切な女性を油断で失っている俺が今更そんなミスを犯すはずがない。
……やはり深海の攻略はもっと慎重にすべきだろう……出来ればもっとサメを増やし、次いで移動速度の速くて強い奴に乗ってその上から指示を飛ばさなければ安全とは言い難い。
そこまで揃ってようやく深海の探索を進めるべきだと判断した俺は、新素材のことは忘れてまず身の安全の確保に全力を費やすことを決めるのだった。
【今回名前が出た動物】
ウミサソリ
アンモナイト
モササウルス
メガロドン
トゥソテウティス(巨大イカ)