七十八頁目
朝を迎えた俺は、しかしあえて拠点へ戻ろうとは思わなかった。
まだ仲間たちの傷が癒えていないのも理由の一つだが、何よりも……元の場所が分からなくなってしまったのだ。
今更ながらに帰る目印を付けてこなかった自分が情けない。
仕方なくこの場所で拠点を作ろうと思ったが、もう少し先に浅い川を渡った先に小さい小島があるのを見つけた。
中央が少し出っ張っている島なので、この中心に家を作れば敵の進行を見落とすことはないだろう。
何より草食しか見当たらない安全そうで、いかにも温暖な心地の良さそうな土地だ。
とにかくここに新しい拠点を作りながら色々と考えて行こう。
七十九頁目
素材を集め拠点を作りながら、この小さい小島を横断すると先には海が広がっていた。
正確には海に見える真水だがとにかく、この俺が居る場所は四方をこの水に囲まれているのだろう。
これのせいで俺はこの島を脱出できないでいる……逆に言えばこれを乗り越えれればどこかにはたどり着くはずだ。
そして海を渡る手段と言えば船だろう……尤も俺に作れそうなのは筏ぐらいだろうけど。
何かで読んだ覚えがあるが、筏は木材を加工して作れたはずだがこの島には腐るほど木々が無数に生えてくる。
やってやれないことはないはずだ……拠点を作りながら筏も同時に製作していこう。
何度失敗してもやりきってやる、全てはこの島を脱出するために。
八十頁目
興奮と混乱とで俺の頭はパニック状態だ。
小島で素材を集めて回っていたら、何と古めかしいアンティーク調の箱を見つけたのだ。
しかも中からは文字の書かれた日記の断片が出てきた。
最初は喜んだ、人間が居た跡を見つけられたことに……何よりもこの島に俺の他に人間がいるのだという事実にだ。
だけれども日記を見て、古めかしい英文で書かれたそれを何の抵抗もなく読み解けたことで逆に恐怖を覚えた。
俺は英語なんか苦手だった、少なくともこんな長文を一見して解読できるような語学力はなかったはずだ。
なのにまるで日本語を読むようにスラスラと読めてしまう……これも左手の鉱石の効果なのだろうか。
どちらにしても不気味で仕方がない……だけど見て見ぬ振りもできはしない。
そして日記を読んで……どうも続き物の断片だったようでよくわからない単語ばかりが書かれていた。
アーティファクト、それにオベリスク……これらが指し示すものは何なのだろうか。
八十一頁目
あの日記を見つけてから素材を集めるのもそこそこにこの小島内を探索して回った。
すると先日見つけたのと合わせて、四枚もの日記のページを見つけることに成功した。
そのうち三枚は先日見つけたのと同じ箱に入っていたが、残る一枚は壺の中に入っていた。
それを読み解いてみると、三枚の日記を書いた人物はロックウェルという科学者のようだ。
残る一枚は頁の最後に書いてあることが正しければ、ガイウス・マルケルス・ネルヴァという軍人らしい。
またどちらの日記にもこの島にはたくさんの人間が居て、それぞれが部族を作り抗争していたと書かれている。
これが本当だとしたら、彼らはどこへ消えたのだろう。
またロックウェルという学者がこの島にあるものを調合して作ったらしい記憶を消す薬……果たして本当にそんなものが作れるのだろうか?
【今回登場した日記】
ロックウェルの記録(#19/#2/#20)
ガイウス・マルケルス・ネルヴァの記録(#11)