五百七十九頁目
調理室の冷蔵庫からケツァ君の背中にある冷蔵庫にラザルスチャウダーを移しつつ、改めて深海へと出かける支度をしていると下の方から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
一旦作業を止めてケツァ君の背中から出してみると、そこには元気を取り戻した様子のオウ・ホウさんと、涙目をこすっているメアリーが二人してこちらに手を振って来ていた。
どうやらあの薬が無事に効いてくれたようだ……聞けばマァも元気になったようだが、彼はお腹が減っているとのことで調理室に直行してしまったらしい。
多分擦れ違いになったのだろうけれど、とにかくこれで後顧の憂いは無くなった……一安心といったところだろう。
そんな俺にオウ・ホウさんは薬を作って持ってきてくれたことにお礼をしたいし、何よりあの毒ガス洞窟で分かった情報を共有したいからかつてのように話し合わないかと提案してきた。
少しだけ悩んだが、結局俺はこの提案を受け入れることにした。
やっぱりこの島で生き抜いていくには仲間が必要だから……いや、やっぱりそれは違う。
フローラを失った悲しみが強すぎてつい見落としてしまっていたが、彼らも既に俺にとって大切な存在だったのだ。
そんな彼らと離れて行動するのは辛い物があるし、その間に今回の様なトラブルで彼らの中で誰かが命を落とそうものなら間違いなく俺は後悔する。
そしてそれは多分彼らも同じだ……皆の目が届かない所で俺が亡くなったりしたら、きっと物凄く苦しい思いをさせてしまうだろう。
だからこそ俺はもう一度彼らと……トライブの仲間と共に行動を再開することにした。
……だけど最終的な目的であるこの島の主への復讐だけは変わらない……変える気もない……。
かつての目的はフローラと二人で末永く暮らしていくことだったけれど、彼女の居ないこの島で長生きしても何の意味もないのだから。
五百八十頁目
前に皆で集まっていた会議室のような場所に集まる……前に調理室へ寄り、冷蔵庫を開けっぱなしにして中身を漁っているマァと合流する。
その食欲からしても体調は問題ないようで、そんな彼を食事ごと運ぶことで話し合いに参加させることに成功した俺達は改めて会議室で……かつてフローラがいたころ、朝一でしていたような話し合いを始めた。
まずその場で俺に対してオウ・ホウさんが再度お礼を口にしてきて、それに合わせるようにマァと……何故かメアリーまでもが頭を下げて来る。
そして口をそろえるように悪いとか申し訳ないと呟くその声には感情が籠っていて……恐らくフローラの事も含めての謝罪のような気がした。
そんな彼らにこちらも頭を下げて、今まで一人勝手に行動していたことを謝罪する。
俺の謝罪に驚いた彼らは謝るのはこちらの方だと更に謝罪しようとしてきて……だけどその前に俺は、これからもよろしく頼むとだけ告げるのだった。
そんな俺を見て彼らは何を感じたのか、メアリーとマァはどこか安堵した様子で頷き……ただオウ・ホウさんだけは何か言いたげにこちらを見つめてきていた。
しかしすぐに表情を和らげると、ならばこれまで通り共にやって行こうとだけ呟いた。
俺もまた頷き返したところで、久しぶりに……フローラを失ってから初めてとなるお互いの情報を交換して本日の予定を決める話し合いが始まったのだった。
【今回名前が出た動物】
ケツァルコアトルス(ケツァ君)