五百九十二頁目
少しばかり感傷に浸りそうになるが、仲間達が頑張っているというのにこんなことで時間を無駄に使っていては仕方がない。
だから一旦このことは置いておいて、当初の目的通りあの特殊なキノコ探しを再開することにした。
尤もどこにあるのかが全く見当がつかないのだけれど、とにかくこの山を下ってもっと木々の多い場所で……と思ったところであいつが目に飛び込んでくる。
ブロントサウルス並みの巨体を持った超巨大な肉食……俺達が捕まえたあいつが……フローラが最後に作ったあの金属の壁に囲まれた罠の中に……。
視界に入った時点で怒りが込み上げて来て、思わずその頭をクロスボウで狙い定めようとして……手綱を手放したことでアルケー君から落ちそうになる。
だから慌てて体勢を持ち直そうとしているうちに少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
そして改めてあの超巨大な肉食を見ると、バタバタしているこちらに気付いたのか顔を上げて……他の動物と同じく親し気に見つめて来るのだった。
……そんな目で俺を見るな……見ないでくれ……これじゃあ憎むことも……
五百九十三頁目
複雑な気持ちを押さえてその場を後にした俺は、気が付いたら沼地まで来ていた。
よほどあいつを見て居たくなかったようだ……だけど本当に見たくなかったのは俺自身の心……。
フローラ……君はやっぱり復讐なんか望まないよね……だったらこれは俺の自己満足にすぎないんじゃ……。
だけどやっぱり止まれないんだ……俺は誰かに怒りと憎しみをぶつけないと耐えられない……生きて居られないんだ。
ただせめてその対象は……この島の管理人であろうあの待つ者に全てぶつけてやろう。
それならいいだろうとフローラに許しを請うように右手首についた鉱石を見つめるが、傷口がずきりと少しだけ痛んだような気がした。
これは肯定してくれているのか……それとも俺は何か間違えているのだろうか?
訳も分からないまま俯きがちに右手の鉱石を見つめて歩いていると、視界の隅に沼地に良く生えている密林の根っこに何かがくっついているのを見つけた。
あの形と色……間違いなく探していたあのキノコだ……沼地で余り衛生的ではないからキノコが繁殖しているのだろうか?
しかしまさかこんな形であのキノコを見つけるなんて……フローラが教えてくれたのかな……。
そんなわけないとは思うけど、そうであってほしいと思う。
……まあそれはとにかくキノコは採取できる場所は見つけたわけだし、できるだけ多く採取してから拠点に戻るとしよう。
【今回名前が出た動物】
ブロントサウルス
ギガノトサウルス(超巨大な肉食)
アルゲンダヴィス(アルケー君)