八十二頁目
日記の断片が入った容器が置いてある場所は、どこもかしこも何かの建物がくずれたような跡地だった。
しかしそれらはすべて苔生して風化していて、素人目に見ても何百年と経過した後のように思われた。
これらの建物がこの日記の主が利用していたものだとすれば、当然彼らも寿命で死んでいることだろう。
だから一旦この日記のことは忘れることにして、俺は再度筏作りに取り掛かった。
相変わらず左手の鉱石がやり方を教えてくれるおかげであっさりと完成した筏は意外なまでに頑丈だった。
人間どころか動物、果ては簡易な建物の土台ぐらいなら置いたところでバランスがくずれたりしない代物だ。
この調子なら筏の上に拠点を作ることも可能かもしれない……移動拠点、何と面白い響きだろうか。
何よりあの海を越えてこの場所を脱出するにしても、色々と積み込んでいかなければ遭難は必須だ。
ならばやはりこの筏の上に拠点をこしらえ、物資を積みこんでから出発すべきだろう。
八十三頁目
俺の筏……移動拠点ハルバードと名付けたこれは傍目から見ても素晴らしい出来に仕上がっている。
壁と屋根に扉をつけて簡易な居住区を確保し、さらに内部には作業机を外部には製錬炉を完備している。
後の問題は食料だがもうこれは焼いた肉と果実を大量に持ち込んで何とか持たすしかないだろう。
……本当は家の中に小さい動物を連れ込んで、後で解体して食料にする方法も考えたがそのサイズの動物がエリマキトカゲとドードーしか見つからなかったのだ。
モソちゃんもギリギリ行けなくもないだろうが、ここまで助けてもらっておいて最後に手を下すような真似はしたくなかった。
一応釣り竿も作ったし、いざとなったらこれで魚釣りでもしてごまかすしかない。
仲間にはここで待機していてもらおう……そのまま俺が戻らなくてもお腹が減れば拘束もしていないし野生に戻ることだろう。
さあまだまだ日も落ちそうにないし、そろそろ出発しよう。
願わくは無事に脱出できますように。
八十四頁目
止めっ!? 止めろっ!! 止めてくれ止めてくださいっ!!
畜生このクソ鯨っ!! ああっ!? い、筏がっ!? 筏がぁあああっ!?
早く浅瀬ににげないとっ!! クソ、どこまでついてくるんだこのクソ鯨っ!!
ああっ!? 筏が悲鳴を上げてるっ!?
もう止めてっ!! お願いだから止めてくださいっ!!
あと少しっ!! 浅瀬まであと少……あぁああああああああああああっ!!
八十五頁目
…………すべて失った
八十六頁目
全ての資材を失って、何とか命は繋いだものの戻った場所は出発した場所からはかけ離れている。
動物も居ない状態で、手元にあるのは装備していた皮の防具と護身用に携帯していた槍とこんがり肉三つ……今度はパチンコも失った。
ああもう、流石にやる気が出てこない。
だけど容赦なく日は暮れてきて、仕方なくのろのろと土台と壁だけのこじんまりとした空間を作って篭ることにした。
ああもう、何なんだよあのクソ鯨……護身用に亀でも連れて行けばよかった。
焚火も焚いてないからどんどん周りが暗くなるけど、もう知ったことか……ふて寝してやる。
【今回登場した動物】
ディロフォサウルス(エーちゃん)
ドードー(ドーちゃん)
モソちゃん(モスコプス)
リードシクティス(鯨)
カルボネミス(亀)