六百二十三頁目
何事もなく……或いは一抹の寂しさを抱えながら次の日を迎えた俺達は昨日話し合った通りの行動に移った。
マァは海中へ仲間を増やしに向かい、オウ・ホウさんはもう少し狼を集めてから俺と一緒に毒ガス洞窟へ狼を連れて行く予定だ。
そしてそれまで俺はメアリーと共にまた必要な物資のクラフトに取り掛かる。
……またかつてのように安定した日々が始まってきたような気がして……このまま段々とフローラが居ない日々も当たり前になっていくのだろうか……。
その方が良いのだろうけれど……それを嫌だと思ってつい右手首の鉱石を眺めてしまうと、仄かな緑色の光を放ったように見えた。
ああ、君のことだけは絶対に忘れるものか……忘れられるはずがない……。
あの幸せな日々を……君の笑顔を……俺が愛したフローラという少女のことを忘れるわけがない。
……大体何より、今もクラフトのやり方を教わろうと密着してくるメアリーの胸部が触れるたびに右手首に痛みが走っているのだから忘れようがない。
本当に君は……そう言う嫉妬深いところも可愛いよ……だけどもう少し痛みを和らげてくれてもいいんじゃないかなぁ?
六百二十四頁目
午前中は痛みをこらえてメアリーと作業していた俺は、午後になったところでようやく準備が整ったオウ・ホウさんと共に毒ガス洞窟へ向けて移動を開始した。
その際にケツァ君の背中には大量の狼を……二十五匹も載せて、ついでにまだ成長途中で小さく可愛らしいナマケモノと豚も連れてきている。
流石に狼がこれだけいれば繁殖用とは別に十匹ほど引き連れて毒ガス洞窟内の浅いところまでは攻略というか、安全を確保できると判断して早速洞窟内攻略用の動物を運搬することにしたのだ。
……何だかんだで動物の子供達を可愛がっていたメアリーが、二度と洞窟から出せなくなるこのやり方を受け入れてくれたことは意外だったが、やはり俺達の命の方を大切に想ってくれているからだろう。
確かに動物に気遣って俺達の誰かが命を落としていたら本末転倒だ……俺もいい加減に割り切ろう。
それにもしも将来、強力な爆発物などを作れるようになったら壁を壊して無理やり洞窟を拡張することだってできるようになるかもしれない。
その時に助け出してあげればいいことだ……尤もこの島の管理人のテクノロジーで調整されているのなら、俺の知る既存の手段では難しいかもしれないが、それこそ管理人を倒してその技術を手に入れられれば……。
そうこの世界全体を管理する力……それさえあればもう仲間を失うこともない……絶対に手中に収めて……また右手首が疼いた、俺は何か間違えているのかいフローラ?
【今回名前が出た動物】
ダイアウルフ(狼)
ケツァルコアトルス(ケツァ君)
メガテリウム(ナマケモノ)
ダエオドン(豚)