六百六十五頁目
サメ達を前に出しながらこのクジラもどきに近づいていくが、思った通りこいつは幾ら接近しても……それこそ手で触れられるほどの距離に近づいてもこちらに攻撃をしてくることはなかった。
そして試しに俺がサメから降りて自由になった手に大トロを持ち差し出してみたところ、嬉しそうに口の中に頬張り食し始めた。
しかしすぐに食べきるかと思いきや、そのままガジガジと何度も大トロを齧り食べカスを零しながら泳ぎ続けてどこかへ去って行こうとする。
慌てて追いかけようとするが、こいつが零れ落とした食べカスが目当てなのか周辺にいる動物が無数に群がってくる。
どうやらあの身体にまとわりついていたエイ達もこの動物が漏らす食べカスが目当てだったようだ。
実際に今もエイやサメなどが近づいてきていて……それでいて俺達に気付くなりいつも通り攻撃的に襲い掛かろうとしてくる。
もちろんそれはオウ・ホウさんとマァが壁となり討伐しようとしてくれるが、その隙に俺もサメに乗り対処できる体制を整えた。
そんな俺達をしり目にクジラもどきは我関せずとばかりに泳ぎながら、もっと食べたいとばかりにすがるような目を俺達に向けてきている。
その様子からこのまま餌を与え続ければ仲間にすること自体は出来そうだ……ただ問題は餌を与えれば与えるほど食べカスが、それこそ文字通り撒き餌として厄介な生き物をおびき寄せ続けることだ。
そいつらに対処しつつ、しかもこのクジラもどきに嫌われないよう攻撃を当てないように立ち回りつつ餌を与え続けるのは中々面倒な話だった。
何せ水中でこいつに手を齧られないよう上手に餌を与えるためには両手を使わないといけないので、そのたびにサメから降りる必要がある。
おまけにこいつは泳ぐ速度こそそこまでではないが、やはり水中であるために上下左右自在に方向転換をできてしまうので口元に餌を運ぼうにも向こうの頭の位置が中々安定しないのだ。
……こんな調子ならいっその事眠らせてから餌を与えるやり方のほうがずっと楽だったかもしれないが、下手に刺激して逃げられたり敵対されても困るから続けるしかない。
六百六十六頁目
かなり苦労しつつも何とかクジラもどきを仲間にすることに成功した俺達は、こいつの能力を試すためにも一旦サドルを用意するために浮上することにした。
すぐ近くにある草食島の拠点……ではなくマグマの洞窟がある辺りに着陸させているケツァ君の背中に乗り、そこに常備してある素材を使ってサドルを作成することにした。
勿論作り方は左手首の鉱石を眺めることで当たり前のように思いつけた……けれど、そこで金属のインゴットが必要だと分かってしまう。
しかしそれは二台目の工業炉を作る際に使い切ってしまっていて、残念ながら作成することはできなかった。
最も必要な量はそれほど多くないので、工業炉内から少し回収すれば足りるだろう。
だから取りに行くかどうか一瞬迷うが、移動に掛かる時間が勿体ないので今日のところは捕獲作業を優先することにした。
何せ今までの時点で既にかなりの時間を使ってしまっている……サドルの作成などは日が暮れてからでもできるけれど、動物の捕獲作業は暗くなってからではできないからだ。
そう判断した俺達は改めて深海に向かおうとして、その際にこのクジラもどきをどうするかだけ相談することにした。
このまま連れ歩いても多少は能力や戦力を確かめることはできるが、サドル無しでは防御力に少し不安が残る。
これだけ苦労して仲間にしたのにあっさりやられては目も当てられない……だからどうするか考えていたところで、ふとこいつの口の中に黒い液状のドロッとした何かが溜まっていることに気が付いた。
果たしてそれを掬って確認して見たところ、どうも原油と同じ様な性質をした素材のようだった。
……こんなものを体内で精製できる生き物がいるとは……一体どんな原理なのだろうか?
ひょっとして海中にある色んな科学的な成分をろ過とか何かしてうまい具合に調合したりしているのだろうか……海中にある色んな成分……クラゲの毒素とかも……いや流石にこれは飛躍し過ぎだろう……連続して戦ったからって関連付けてどうするのか……。
【今回名前が出た動物】
バシロサウルス(クジラもどき)
メガロドン(サメ)
マンタ(エイ)
クニダリア(クラゲ)