九十六頁目
空が夕焼けに染まり始めた頃、ようやく前にスピノを倒した時と同じ人間しか素通り出来ないドア枠を重ねて作った罠が完成した。
スロープを伝わり壁の上から中に入ればもう出られないという寸法で、ここに閉じ込めた後で外から麻酔矢を打ち込むのだ。
木材を中心に作ってあるからわらとは違ってそうそう簡単には壊れないだろう。
ただし問題は麻酔矢を作るために必要な麻酔……を作るために必要な腐った肉が足りないという点だ。
黒い果実はその辺の草むらから幾らでも取れる、だけど肉ばかりは生き物を殺さないと手に入らない。
それがどうしても抵抗がある……いや正確にはその発想に忌避感だとかを抱けなくなりつつある自分に抵抗がある。
この島に来た頃の俺ならば……いや来てからも正当防衛以外で素材目的で命を奪うなど考えもしなかったというのに……
尤も生きるために他の生き物を犠牲にしているのはこの島に来る前だって同じだ。
肉を食べるために、皮を得るために……それらで作られたものを利用するために……ただ自分が手を下してなかっただけのことだ。
だから踏ん切りをつけてやらなければいけないのだ、生きるために……俺が生き残るためには……
九十七頁目
日が落ちた俺は簡易拠点の中で麻酔矢の制作に取り掛かっていた。
やはりこれしかないのだ、他の方法として手元に残っていた二種類の槍に麻酔薬を付加できないか試したけど上手くいかなかったのだ。
鉄の槍にはそもそも麻酔薬がしみ込まなくて、石の槍の方は余りにも強度が不安定で先端部分に付加したところでその部分が分厚い恐竜の皮膚に弾かれて折れてしまいそうだからだ。
だから俺は……夕暮れから日が完全に落ちるまで動物を虐殺しまくった。
この間のトロちゃんと同じ奴、ポーラで拘束したパロロ君の同種にプテラノドン……そしてドードーにエリマキトカゲ。
本当はドードーとエリマキトカゲは殺したくなかった、だけど他の生き物を……それこそ仲間と同種の奴らをこれだけ殺しておいて今更だと割り切ることにした。
下手な情など持っていたら生きていけないのだから……何度自分にそう言い聞かせても、何故か涙が止まらなかった。
九十八頁目
麻酔薬の取り扱いが雑だったせいか、気が付いたら寝落ちして朝になっていた。
警戒する動物も居ない状態で、よく無事に一日を過ごせたものだと安堵するがこうしてぐっすり眠ったおかげで少しだけ精神が安定してきた。
何より苦しみを堪えて行動したおかげで資材は有り余るほどある、麻酔矢も百本以上作ることができた。
これならばどんな生き物でも仲間に出来るような気がする、それこそ肉食の……あのスピノのような奴でさえもだ。
だけどまずは比較的安全な草食から始めよう、第一候補はやはりトリケラトプスだ。
図鑑などではティラノサウルスのライバル的存在としてよく比較されているあれならば、大抵の恐竜には負けないはずだ。
確かこの辺にもいたはずだ、周りに警戒しながら探してみよう。
【今回名前が出た動物】
スピノサウルス
リストロサウルス(トロちゃんと同じ奴)
パラサウロロフス(パロロ君の同種)
プテラノドン
ドードー
ディロフォサウルス(エリマキトカゲ)
トリケラトプス
ティラノサウルス
昨日の分、今日中にもう一話投稿したいと考えております。