七百十三頁目
ある意味では運が良かったのだろう……俺達は襲撃イベント対策の為にローテーションで活動拠点を変えていた。
そしてちょうど今は豪雪地帯の拠点をメインにしていたがために、帰り道の途中で例の強敵だらけの洞窟の傍を通りかかったのだ。
だからこそ、その洞窟の辺りから空に向けて放たれた照明弾に気づくことが出来た。
一瞬驚いたものの、この島においてあんなものを打ち上げるのは人間だけ……つまり俺達の仲間の誰かだと即座に理解した。
何よりこうして離れたところで照明弾が打ち上がるのを前にも見たことがある俺はその時の状況が……フローラの身に起きた出来事がフラッシュバックした。
これは間違いなく仲間の危機だ……反射的にそう理解した俺は同行しているマァに話しかける余裕もなくそちらへ向けて直行していた。
果たして辿り着いたところでは洞窟の入り口前に立つメアリーが泣きそうな顔で空を仰いでいて、近づく俺達に気づくと必死に手を振り始めた。
しかし彼女自体の身体に傷などがついている様子はなくてとりあえず安堵しそうになるが、すぐに一緒にいるはずのオウ・ホウさんの姿がどこにも見当たらないことに気づいてしまう。
もうその時点で嫌な予感を覚えつつも彼女の傍へと降り立つと、すぐに飛びつくような勢いでメアリーが抱き着いてきてオウ・ホウさんが危ないと何度も口にしてくるではないか。
そしてそのまま俺の手を引いて洞窟に入ろうとするメアリー……正直オウ・ホウさんの危機と聞いて俺も今すぐ飛び込んで助けに行きたいところではあった。
だけど仮にも戦闘のプロであるオウ・ホウさんが危機に陥るような状況に、素人に毛が生えた程度の俺達が何の準備も心構えも無しに飛び込んだところで余計な犠牲が増えるだけだ。
せめて事情を聞いて対処法を用意しなければ……そう判断した俺はまずメアリーを落ち着かせると、同じく焦って入って行こうとするマァも呼び止めながら何が起きたのか状況を説明してもらうことにした。
最初こそそんな悠長な、と非難気味であったメアリーだけれど俺が改めて考えを伝えると理解してくれたようで……それでも気持ちが逸るのか何度も洞窟の方へ顔を向けながらだけれど話してくれた。
まずオウ・ホウさんは昨夜の話し合いで決めた通りメアリーと二人でこの洞窟に入り、動物を飼育するための環境を整えていたようだ。
洞窟に初めて入るメアリーはしゃがんで入らなければいけなかったり防護柵をガシガシ叩いている動物に少しビクビクしながらも、何もかもが氷で出来ている洞窟にどことなく幻想的で煌びやかさを感じて緊張が解けて行ったそうだ。
それでも防護柵から外へ出ようなどという気はなく、また手にはしっかりと高品質ショットガンを握りしめたままオウ・ホウさんと協力して動物の子供を洞窟内に運び入れていたらしい。
その時点では何もかもが順調だった……しかし今日できる作業が終わり一息ついていたところで改めて防護柵を壊せないでいる動物達を観察していた二人はちょっとした欲を抱いてしまった。
まずメアリーはこのまま防護柵の内側から上手くこの敵を倒して防護柵を増やすことで、より多くの動物を一度に育てられるよう安全なエリアを広げたいと思ってしまった。
またオウ・ホウさんの方は敵に飛行生物がいないことを念入りに確認した後で洞窟の天井が凸凹としていて、グラップリングフックをひっかけられそうな場所が多いことに気づいて……しまった。
これを上手く利用すれば或いはもう少し先の方まで観察できるのではと思い立ったオウ・ホウさんは……前の毒ガス洞窟でせっかく育てたナマケモノが先に進めなかった苦い経験を思い出したこともあって、動物を育てられそうなスペースを探しがてらもう少しだけ先を見てくると言い出した。
そして実際に天井へフックを打ち込んで浮かび上がる……前に落下したときに備えて念のため、目に見える範囲にいた生き物を可能な限り倒してから満を持して移動を開始したのだ。
……しかし二人は……いや俺達の誰も知らなかった……まさか地面の下に隠れていながら天井近くまで飛び掛かってくる生き物がいるなんて……。
【今回名前が出た動物?】
■■■■■■(地面の下に隠れて飛び掛かってくる生き物)
【今回出てきた洞窟】
SnowCave(強者の洞窟)
【未保有のアーティファクト】
強者のアーティファクト