七百十五頁目
とにかく中がどうなっているのか、オウ・ホウさんは無事でいるのか確認しなければ始まらない。
だからまず俺がメアリーの持つ予備の毛皮の衣服とポンプアップ式のショットガンと弾丸を受け取り一人オウ・ホウさんの元へ向かうことにした。
そしてその間にメアリーとマァには一度拠点へと戻ってもらい、武器と弾薬を可能な限り取ってくるように頼んだ。
危険な洞窟へ入る俺を二人は少しだけ不安そうに見ていたが、すぐに拠点の方へと飛び立っていった。
尤も俺はそれを最後まで見届けることもなく、走って豪雪洞窟の中へと入った。
すると見覚えのない空間が奥まで広がっていて……そこでふと俺はこの洞窟を見つけてから一度も中に入ったことが無かったのだと気が付いた。
だから下手したら道に迷うかもしれないと不安になるが、とりあえずは一本道なので問題なく進むことができた。
そして話に聞いたしゃがまなければ入れない狭い場所にぶつかったところで、その向こうから獣の咆哮……或いは悲鳴のような声が聞こえてくる。
その合間合間にオウ・ホウさんが気合の篭った掛け声とともに弓矢を放っている音も聞こえてきた。
どうやらまだ生きていてくれたようだ……その事実に安堵しながらも、同時にすぐ向こうに無数の敵が居る事実に気を引き締めながら慎重にこの狭い場所を潜り抜けていく。
果たしてそこを越えた先には生き物の出入りを押さえるように防護柵がバリケードのように配置されていて、人一人がギリギリ通れる隙間が続いている。
そこを通り抜けるとすぐに小さい水路の流れる広い空間へと繋がっていて、その水辺の向こうにある氷壁の一部に出っ張りがありそこの上に陣取っているオウ・ホウさんを見つけた。
彼は必死になってその足元に集っている狼や体毛が白っぽい熊、そして人型をしたゴリラに似た……或いは雪男とでも呼ぶべき生き物が這い上がってこようとしている所に刀でもって切りつけて強引に叩き落すことを繰り返していた。
しかしそんな動物たちだがあの切れ味の良い高品質な刀で切りつけられているにもかかわらず殆ど傷がついた様子が無く怯みもせず何度も攻撃を仕掛けようとしている……前にも聞いていたことだがどうやらこの洞窟の生き物もまた外にいる野生の生き物とは別次元の強さを誇っているようだ。
それに対してオウ・ホウさんは肩で息をするほど疲れて居て、おまけにどこかから出血しているのか動きも鈍いように見えた。
メディカルブリューを飲めば傷を癒すこともできるはずなのにそれをしていないということは既に手持ちの物を使い切ってしまったか……攻撃の手を緩められず飲む暇がないのか……それはここから見ていても分からなかった。
しかしどちらにしてもこのまま放っておくわけにもいかず、俺はオウ・ホウさんに声を掛けつつ早速ポンプアップ式のショットガンを構えてそいつらに向けた。
そして少しでも散弾の効果を上げようと防護柵ギリギリに近づいて打ち放ったが、まだまだ距離があり過ぎるのか殆ど効果はなかった。
それでも何匹かはこちらに引き寄せられてきて、少しは対応する敵の数が減ったことでオウ・ホウさんはようやくこちらと会話する余裕が出来たようだ。
そうして向こうの状況を聞くとやはりメディカルブリューを使い切ってしまっているらしい……おまけに地面の下から飛び出してくる敵がどこに隠れているかも分からないから動くに動けないというのだ。
それでももうしばらくは持ちそうだから、その間に出来る限りこの場の生き物を一掃しておき、その上で地面の下に隠れている生き物を探す方法を考えるしかないようだ。
しかし敵のこの硬さでは時間が……何より倒し終えても地面の下にいる奴なんかどうすれば……くそっ!!
【今回名前が出た動物】
ダイアウルフ(狼)
ホッキョクグマ(体毛が白っぽい熊)
イエティ(ゴリラに似た生き物・雪男)