七百二十二頁目
日も落ちた辺りでようやく立ち直ったらしいメアリーが寝室から出てきた。
しかし今度はマァが早めの眠りについてしまったらしく、あの洞窟の攻略法などの今後の予定については明日の朝一で話し合うこととなった。
そう決まった時点でオウ・ホウさんもまた早めに休むといい工作室を出て行ってしまう。
流石に今日は洞窟であれだけやられたこともあって精神的疲労がたまっていたようだ。
俺もまた海底洞窟から戻った足で豪雪地帯の洞窟での騒動があったから微妙に疲れているが、もう少しぐらいなら起きて居られる。
逆に今まで休んでいたメアリーなどは全く眠気が無さそうだが、俺が立ち去るかどうかを凄く気にしているように見えた。
多分洞窟でのショックが後を引いていて、夜中に一人で起きているのが心細くて誰か傍に居てほしいのだろう。
だから俺は新しく作った粉砕機や手に入った道具について説明しつつ、まだ時間があるから何か作ろうと思っていると告げるとメアリーは嬉しそうに笑って協力すると頷いてくれた。
そして何か作ろうと素材を漁って、そこで海中から持ち帰ってきたクラゲの毒を見つけて強力な麻酔弾を新たに作ろうとしていたことを思い出した。
早速二人で手分けして作業を開始する……元々の麻酔弾にクラゲの毒を追加して更にそれが漏れないように金属のインゴットでもう少しだけ補強する。
果たしてあっという間に出来た新しい麻酔弾は通常の眠気誘因に加えてクラゲの放つ電撃の持つ痺れを利用することで気絶しやすくなっている代物で電撃麻酔弾とでも呼ぶべき物だった。
これをライフルで打ち出すこと今まで以上に生き物を眠らせやすくなるはずだ……それこそこれならあの超巨大な草食だって行けるかもしれない。
ただあの巨体ではただのライフルで打ち出したところで表面に刺すのが精いっぱいで、これだと全身に麻酔を行き渡らせるのにかなりの量が必要になりそうだ。
それこそ前に使っていた高品質のライフルで勢いよく飛ばして肉の内部にまで打ち込めるのなら更に効率よく麻酔を掛けられそうだが……カプセルから手に入れた高品質のライフルは現品で一点物だったけれどフローラの身体と共に……。
久しぶりにフローラを失った当時の状況を思い出し落ち込みそうになり、慌てて右手の鉱石へ視線を映して気持ちを落ち着けようとする。
今まで見てきた様々な現象からしてきっとこの中にフローラの魂は宿っていると信じたいし、だからこそ生き返らせることも不可能じゃないと思いたい。
だけど同時にやっぱりそんな非現実的な……死人が蘇るとか魂がどうのとか、そういうのがあり得るのかと不安にもなってしまう。
右手首の鉱石は俺を励まそうとするかのように淡く緑色に光って見せてくれるけれど、この現象が本当にフローラの起こしていることなのか……ただ強引に埋め込んだ反動でバグっているだけかもしれないし、或いはこの島の管理人が何かを目論んでやっているのかもしれない。
そんな俺にとって前に一度だけ寝て居る間にフローラが書いたと思わしきメモ書きだけが心の支えだった。
だけどこうして一つ疑心を抱いてしまうと次から次へと不穏なことが頭を過ぎりそうになり、俺は気分転換しようと軽く息を吐きつつ顔を持ち上げて……こちらを神妙な顔でじっと見つめるメアリーと目が合ってしまうのだった。