七百二十三頁目
どうやら俺はよほど暗い顔をしていたようで、目が合ったメアリーは心配そうに大丈夫かと声を掛けて来る。
心配を掛けたくなくて大丈夫だと言い返した俺は、作業に没頭して忘れようと思い電撃麻酔弾を量産する作業へ取り掛かろうとして……後ろからメアリーに抱き着かれてしまう。
腕を回し優しく労わる様にギュっと密着してくるメアリー……前にフローラもこんな風に抱き着いてきたような気がして当時のことをまた思い出しそうになってしまう。
尤もあの時とは違って背中に柔らかい感触が……い、痛い痛いっ!! まるで抓られてるみたいに右手首が痛いっ!!
ち、違うって別に意識してるわけじゃなくてただの純粋な感想みたいなもので、フローラの方がずっと好みだからぁっ!!
そんなことを思いながら必死に右手首の痛みと格闘しつつ何とかメアリーを引き離そうとするが、彼女は頭を俺の背中にくっつけながら嫌々するように首を振るばかりだった。
しかも少しするとメアリーは涙を流しているのか背中に湿り気を感じてきて……震える声で無理しないでとぽつりと呟いてくる。
驚く俺にメアリーは、フローラの件と先ほどの洞窟の一件を口にした上でもう仲間を失うのは嫌じゃといい、だから一人で色々と抱え込んで無茶しないで欲しいというのだ。
メアリーの言葉が余りにも重く聞こえたためか右手首の痛みが少し軽くなった気が……或いは俺の意識がメアリーの方に向いた結果痛みを感じにくくなっただけかもしれない。
しかしそんなことよりも不安そうにしているメアリーを落ち着かせなければと思い、別に何も気負ったりしていないと告げるが向こうはもう一度フルフルと首を横に振る。
そして俺に未だにフローラの事を引きずっているのだろうと言い……特に自分が近づいたり触れるたびに右手首を意識して取り乱していることを指摘してくる。
それはただフローラの嫉妬というか右手首が痛むからなのだが、そんなことは露知らぬメアリーは寂しそうに、自分がこの島で唯一フローラと同じ女性だったから自分が近づくと思い出して苦しくなるから距離を取ろうとしているのだろうと語るのだ。
まさか俺の態度の変化をそう捕らえていたとは……なんかとんでもない勘違いをさせて気を使わせてしまっているみたいで申し訳なくなってくる。
フローラもこの会話が聞こえているのかはわからないが右手首の痛みもさらに小さくなった……やっぱりフローラもこの状況を悪いと思ってくれているのだろう、多分。