ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第385話

七百九十一頁目

 

 炎が直撃しては幾ら高品質なサドルが鎧のように身体を保護していようとも関係なくダメージが通ってしまう……ましてそのブレスは岩どころか鉄すらも溶かしそうなほどの火力だったそうだ。

 まさしく神話生物であるドラゴンに相応しい威力のブレスを受けた生き物たちは、あの頑丈だったギガノトも含めて一気にボロボロになってしまったらしい。

 それでも持ち前の体力で耐えたギガノトとケーキや自らの能力で傷を癒せるテリ君達と豚達はまだ何とか生き残っていたらしいが、ユウキィ君達は耐えきれずあっさりやられてしまった。

 

 もはやこの時点で絶望的だったのだが、それでも炎のブレスは何度も連続して放てるわけではないらしくその隙を付く形で反撃自体は何とか出来たそうだ。

 しかしドラゴンはブレスを吐けない間とて無防備でいたわけではなく、その巨体を生かして前足で強烈な叩きつけ攻撃を行ってきて……その威力はあの青いオベリスクで戦ったゴリラよりも力強い一撃だった。

 尤もブレス以外は高品質サドルのおかげでかなりダメージを軽減できる……またドラゴンは自身の股下には攻撃が届かないようでそこに陣取ったオウ・ホウさんが動物と合わせて攻撃を仕掛けることで相手にもかなり傷を負わせることが出来たそうだ。

 

 ひょっとしたらこのまま勝ててしまいそうだと誰もが一瞬は考えた……だけどそれも奴が再び翼を広げて空へと飛びあがり火球を飛ばし始めるとまた一転して状況は絶望的になってしまった。

 何せ空を飛ばれるとこちらとしては人間の武器でしか攻撃できなくなってしまうのに、向こうは一方的に火球を放って攻撃することが出来てしまうのだから。

 こちらは飛行生物の連れ込みを禁じておいてこのやり方は余りにもずる過ぎるけれど、それでも実戦経験の豊富なオウ・ホウさんは諦めることなく先ほどと同じ様にギガノトを盾にして弓矢で顔を的確に射貫き続けたという。

 

 すると再び不快そうに身体を揺らしたドラゴンは不意に意味も無く中空に剥けてブレスを吐き始めた。

 それはまるで何かに合図でも送っているようだとオウ・ホウさんは無線機の向こうで呟いたそうだが、果たしてその推察も絶望的なまでに正しかった。

 何故ならすぐに空の向こうから無数の飛行生物が……プテラノドンと始祖鳥のような生き物が大量にやってきてオウ・ホウさん達に襲い掛かってきたのだ。

 

 今までのオベリスクの試練でも確かに配下の生き物を呼び寄せていたのだから想定できてしかるべきだったが、ただでさえ反則的なブレスがあるのにまさか仲間まで……こんなの反則じゃないか。

 しかもこいつらはたまに洞窟内で湧いてくる強敵のように野生の個体と比べてかなり硬く、おまけに動物よりも人間であるオウ・ホウさんを狙って攻撃してきたという。

 それでもギガノトの圧倒的な威力且つ広範囲に及ぶ噛みつき攻撃でこいつらを駆除すること自体は出来たそうだが、それに手間取っている間にドラゴンは火球を合わせて放ってくるのだ。

 

 おかげでギガノト達も傷がどんどん増えて来てその目には暴走の兆候とばかりに野生が宿り始めていた。

 そんな絶望的な状況の中でも最後までオウ・ホウさんは諦めず冷静に敵の配下の生き物を倒し、再び弓矢で顔を射抜こうとして……そこで駄目押しとばかりに再びドラゴンが地面に着地してきた。

 恐らくは傷だらけだが主力であるギガノト達を炎のブレスで一掃して一気に勝利に持ち込むつもりなのだろう。

 

 そう判断したオウ・ホウさんだったがこれはむしろ逆転の最後のチャンスだと思い、あえて逆に正面から突っ込み……ギガノト達に何度も指示を飛ばしドラゴンの身体に四方八方から密集して押し込んだ。

 反射的に翼をひるがえして空に避難しようとしたドラゴンだが、オウ・ホウさんの目論見通りギガノトの巨体に阻まれたことで幾ら翼をはためかせても飛び上がることが出来なくなった。

 これでこちらも全力で攻撃できる……後はどちらが先に倒れるかの殴り合いだ。

 

 そこまで持ち込んだオウ・ホウさんは改めて無線機に向かってもしドラゴンと再選する場合にはと前置きした上で、何とか向こうが着陸するように仕向けた上でケーキなどで体力を頻繁に回復できる動物を囮にしてブレスを引き付けておきながら小柄な動物に乗った人間が安全な股下にくぐりそこで重火器で一気にハチの巣にするか、或いは今回のようにギガノトのような巨大生物で押し込んで飛び上がれなくして一気に全力で攻撃を仕掛けるべきだと語った。

 ……これはつまり言外に自分が敗れた時にはという意味だったのだろう……そしてそこからはオウ・ホウさんは攻撃に集中するというと後は動物たちが激しく戦闘する音ばかりになってしまった。

 

 しかししばらくするとドラゴンがブレスを吐く音が聞こえたかと思うと動物たちが静かになった。

 そして最後の最後にオウ・ホウさんの気合の篭った叫び声に呼応するようにドラゴンが咆哮しながら尻尾を振り回す音が聞こえて……それっきり無線機は雑音しか流さなくなってしまったという。

 

 ……こんな絶望的で圧倒的な敵を相手にここまで奮戦していたなんて……もし俺が正気で皆で同時に挑めていたらもしかしたら……くそっ!! 俺はどうしようもない大バカ野郎だっ!!




【今回名前が出た動物】

ギガノトサウルス
テリジノサウルス(テリ君)
ダエオドン(豚)
ユウティラヌス(ユウキィ君)
メガピテクス(青いオベリスクで戦ったゴリラ)
プテラノドン
ディモルフォドン(始祖鳥のような生き物)

ドラゴン
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