ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第395話

八百九頁目

 

 ドラゴンは雑魚を全滅させても降りてこようとしなかった。

 ただ空に留まり続けながらひたすらに火球を放ってくるのだ。

 火球自体の速度はそこまで早くないけれど、マグマが流れていて足場が良くないこの場所で巨大すぎるギガノトでは避けるのは難しい。

 

 それに万が一にも人間である俺達に当たったらどれだけのダメージを受けることか……だから仕方なく皆でギガノト達を傘代わりにして火球を受け続けるしかなかった。

 一応火球は高品質のサドルでダメージを軽減できるのと、大量に持ってきたペットフードのおかげで豚が回復し続けてくれているので大した怪我は負っていないがこのままではじり貧だ。

 どうにかしてドラゴンを地上に降ろさなければ……一番威力の高いショットガンにしても、動物たちに攻撃してもらうにしても空を飛ばれていてはどうしようもない。

 

 もちろんアサルトライフルで撃つことはできるけれどそれだけでは火力の差は歴然だ。

 だからこそ俺は皆に指示して頭ではなく翼を狙い撃つことにした。

 あの巨体を翼の羽ばたきだけで浮かび上がらせているとは思い難いけれど、それでも頻繁に動かしているところを見ると何らかの飛行補助の効果はあるはずだ。

 

 それを打ち抜いてボロボロにしてやればずっと飛んでいるわけにはいかなくなるだろう。

 だから全員でアサルトライフルに持ち替えてドラゴンの翼を打ち抜き始めたのだが、やはり俺以外の二人はそこまで命中率が高くなかった。

 それでも時間を掛けて大量に弾を作っておいたから無駄弾を気にせず打ち続けてやると、思った通り少しずつ高度が下がってきた。

 

 ドラゴンは不快そうな顔をしながら再び配下の飛行生物を呼び出してきたが、やはりこいつらはギガノトのおかげであっさり処理することができた。

 この調子ならばもう少しであいつを引きずり降ろして本来の作戦通り事を運ぶことができる……そう思ったのだが次の瞬間、ドラゴンは勢いよくこちらに向かって急降下してきたかと思うと、そのまま地面すれすれを低空飛行しながら舐めるように炎のブレスを吐き出してきた。

 予想外の一撃だったが洞窟で反射神経なども徹底的に鍛えていた俺は即座に岩陰へと隠れることができた……だけど炎を吐きながら移動するドラゴンを見てメアリーは固まってしまった。

 

 着地するまではブレスを吐かないと思い込んでいたのか、それとも間近で見るドラゴンの迫力に気圧されてしまったのか……そんなメアリーを咄嗟に傍にいたマァが庇うように飛び掛かりそのまま近くにいたギガノトの影に隠れたが、僅かに間に合わずマァの身体は炎に包まれてしまった。

 代わりにメアリーは無事だったみたいだが、自分を庇ってマァが酷いことになっているのを見た彼女はもう周りの状況など目に入らなくなってしまった。

 

 必死にマァの身体を包む炎を消そうとして、またメディカルブリューを掛けたりしながら彼の名前を呼び続けるばかりだった。

 それでもマァは何も返事をしない……その時点で近づいて状態を確認したいところだったが、俺達の上空を通り過ぎたドラゴンが再びこちらに向かってこようとしていた。

 このまま同じ攻撃を繰り返されたらお終いだ……凶悪すぎるブレスを上空から放たれ続けたら勝てるはずがない。

 

 ただ翼を撃ち続けたおかげで高度はかなり下がっている……あともう少し翼を傷つけられれば……そう判断した俺は、背の高いギガノトと共にポンプアクション式のショットガンに持ち替えてドラゴンに突撃した。

 ギガノトをブレスの壁にしつつその身体で動きを止めておき、その隙にショットガンの弾を全弾翼に叩き込んでやろうとしたのだ。

 しかしそんな俺達の動きを見たドラゴンはサッと身をひるがえして、ブレスを吐きながら後ろへと飛び下がってしまった。

 

 まるでギガノトに抑え込まれないようにしているかのように……多分オウ・ホウさんとの戦いで動きを封じられたことを覚えていて警戒しているのだろう。

 ただ突撃しようとしたところを無理やり動きを変えたものだから、傷付いている翼には負担が大きすぎたようでついに地上へと降り立ったではないか。

 このチャンスを逃す手はない……そう思ってギガノトで囲い込みに行ったが、やはりドラゴンはそれだけは警戒しているのか、炎のブレスを吐きながら後ずさり一定の距離を保ち続けようとする。

 

 しかもそのままマグマの中に入ってしまったが、向こうは耐性が有るのか温泉にでも浸かっているかのように平然とした様子で足を止めてこちらを睨み続けていた。

 こうなるともう接近戦を挑むのは難しい……おまけに向こうはそんなこちらを見て厭らしく笑うと、悠然と空に向けてブレスを吐いて再び配下の飛行生物を呼び出して俺達を襲わせ始めたのだ。

 

 あの時は本当に終わったかと思った……フローラが活を入れてくれなかったら……そしてあの援護が無かったら多分俺も……。




【今回名前が出た動物】

ギガノトサウルス
ダエオドン(豚)
プテラノドン(配下の飛行生物)
ディモルフォドン(配下の飛行生物)

ドラゴン
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