ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第425話

四頁目

 

 かつての文明開化しきった状況に慣れすぎているせいか、久しぶりの原始的な作業に少し手間取ってしまう。

 何より採取する道具が乏しい上に粗末すぎて採取効率も悪すぎる……下手にいい道具を知ってしまったせいで、材料の集まりの悪さに辛さを覚えてしまう。

 まあ単純にこの場所が暑すぎて一つ一つの動作で汗をかきすぎるせいでもあるのだろうけれど……あの島にいたときは原始的な生活を懐かしんだこともあったけれど、実際に体験すると早く環境を整えて楽をしたいと考えてしまう。

 

 そのためにもまずはどこでどんな材料が取れるのか確認していかなければ……何せ初めて見たサボテンは樹木の代わりになると思いきや、材木として使えそうな強度の素材は全く取れなかったぐらいだ。

 尤も代わりとばかりに新素材として使えそうなサボテンの樹液が取れる上にそれがまた飲料水の代わりに飲めるとわかった。

 これならばとりあえず水分不足で倒れる心配はなくなったと思っていいだろう……ただこれ以上気温が上がったら熱中症とかでやっぱり倒れる可能性は十分あるけれども。

 

 ……周辺をうろつくラプトルを始めとした肉食といい、この暑すぎて避難場所もろくに見当たらない環境といい、本当にここは前の島よりもずっとサバイバル難易度が高いようだ。

 ひょっとしてここは前の島の環境を克服した強者を更なる高みへと導くために用意された場所なのかもしれない。

 そういえばここに来る前に一瞬謎の空間に入ったけれど、そこで出会った『待つ者』とやらが実際にここまでこれたサバイバーに何かさせたいと言っていたような気がするが……?

 

 その直後に気が付いたらここにいたわけでそれ以上詳しい内容は聞けなかったけれど……こんなサバイバル能力ばかり伸ばさせた上でこの場所で一体俺に何をさせたいのやら?

 ……いやもしここもまた通過点に過ぎないとしたら……もしかして次はもっと過酷な土地に……い、いややめようこれ以上過酷な土地など想像もつかない地獄だろうし、そんな場所に飛ばされるなど考えたくもない。

 

五頁目

 

 くだらないことを考えている間にも身体は自然に動いていて、こんな砂漠の地にも健気に自生している植物から果実と繊維を採取していた。

 まあこれらもきっと箱舟のシステムが意図して用意しているものだろうし、きっと目を離しているうちにまた新しく生えてくるだろう。

 だから種を残すだとかとりあえず気にせずに果実を口に含みつつ繊維を編んで防具替わり、にするには頼りないけれどいつまでも全裸でいるわけにもいかないため布のズボンと上着と帽子を紡ぎあげる。

 

 相変わらず左手首の鉱石が力を貸してくれるのか、それとも単純に作りなれているせいか簡単に完成したそれらを装備すると少しは周囲から感じる熱がマシになった気がした。

 裸より何かを着た方が涼しく感じるのは不思議だけれど、そういえば余りにも日光が強い場所では肌を露出するより隠したほうが体温調節にはいいと聞いた覚えがある。

 何よりこの場所の植物を始めとした素材は特殊なものだから、それこそ前に作ったギリースーツのように作り上げた衣服そのものに体温を調整する機能のようなものが付いている可能性もある。

 

 ただ皮がないから一番酷使する箇所である手と足を覆う部分は作れていないのだけれど……砂に触れている足の裏から伝わる熱気が痛いぐらいだし、手先もサボテンっぽい植物を採取する関係上早めに保護する防具を作った方がよさそうだ。

 しかしそのためには動物を倒すための武器が必要になるけれど、そのためには岩を砕くことで手に入る鋭い火打石のような素材と持ち手などになる木材も必要となる。

 そのどちらを手に入れるにしてもまずは素材を採取するための道具が必要で……だからやっぱりまずは木材を探して、それで石のピッケルを作るところから始めなければ。

 

六頁目

 

 ようやく木材の代わりに使えそうなしっかりとした樹木を見つけた……のはいいけれど、そのそばにラプトルがうろついているから困ったものだ。

 前は向こうから近づいてきてくれる皮と肉要因だったけれども、ろくな装備もない現状では命を奪いうる恐るべき強敵でしかない。

 しかもこいつらは足が速いから一度目をつけられたら人の足で逃げ切るのは不可能に近い。

 

 おまけに頭もいいから集団で襲ってくる上に下手な動物に乗っていても引きずりおろしてくるから質が悪い。

 さてどうしたものかと頭を悩ませるが、そこでノシノシと重厚な足音を立てながら近づいてくる動物の気配に気が付いた。

 振り返ってみればそこには前の島には存在しなかった独特のフォルムをした大きな動物の姿があった。

 

 背中に二つの瘤があり、しかも砂漠を歩いている姿のせいか余り似てもいないのにラクダを連想させるそいつは草食のようで地面に生えている草をむしりながら俺のそばを無警戒に通り過ぎようとしていた。

 ……こいつを囮に使えばあのラプトルを追い払うことができるかもしれないな。




今回登場した動物

ユタラプトル
モレラトプス(背中に二つの瘤があるラクダを連想させる草食)
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