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少しばかりドキドキしてしまったが、どうやら余計な心配だったようだ。
巨大蛾の方は普通に気絶させることができた上に色々と食べられそうなものを口元へと持っていったらあっさりと果実に食らいついた。
そしてしばらくするとこちらに懐いた様子を見せ始めて、実際に目が覚めるとやっぱりこちらに従うような態度を見せてくれたのだ。
やはりこの砂漠でも動物を仲間にすることは可能なようで、とりあえず一安心とばかりに胸を撫で下ろしつつ左手首の鉱石を見てサドルの作り方を考えてみる。
果たしてこれも上手くいき、動物の皮とキチン質の素材か代用品となるケラチンを繊維でくっつけることで乗ってもバランスを崩さずに済む立派な奴を作れそうであった。
繊維はその辺の草から採取できるし皮は動物を倒した際に十分すぎるほど回収している。
その二つに比べて希少なキチン質の素材も先ほどの虫から採取した分と、拠点確保のために討伐した肉食の中に混ざっていた刺を飛ばすトカゲから代用品となるケラチンが取れている。
後はこの素材を無駄にしないよう慎重にクラフトするだけだが、このサドルの構造自体は単純だから作業机のような集中できる場所でなくてもこのまま組み立てられそうだ。
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上手くサドルも作れたところで早速仲間にした巨大蛾……モスラと名付けたこの子に装着すると、その上にまたがり飛行するよう命令してみた。
これで上手くいけば楽に……などと考えるまでもなく、予想以上に力強く羽ばたきだしたモスラは俺を載せたままあっさりと空へと飛びあがってくれた。
まさかこんな最初のうちにいきなり飛行手段を確保できるとは有り難い限り、ではあるのだが軽く飛行してこの子の能力を確認したところ色々と残念なこともわかってしまう。
それはつまり、この子は前の島にいた飛行生物達の悪いところを集めたような能力しか持ち合わせていないようなのだ。
具体的には運べる重量とスタミナはプテラに毛が生えた程度でしかなく、それでいて移動速度の方はアルケン君にも負けそうなぐらいだ。
また虫だからか身体そのものが脆いようで、他の生物のように固い部位で反撃するような真似もできそうにないために自衛手段が例の鱗粉を巻いて逃げるぐらいしかないようだった。
まあ基本的に飛行生物を使って戦闘を行うつもりはないけれど……戦闘力も高くて沢山運搬できてスタミナもあったから長距離移動だってできたアルケン君がいかに優れていたかよくわかるなぁ。
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他の飛行手段を知っているからこそ問題を多く感じてしまうが、考えるまでもなく自由に空を飛べるというだけで計り知れないほどのメリットがある。
実際に思いっきり高く飛びあがり、空の上から周囲を見回すことでこの土地の全貌をおおよそだが把握することができてしまったほどだ。
尤もそれは起伏が激しく様々な環境がひしめいていた前の島と違い、全体的に渇いていて視界を遮りうる木々を始めとした自然物が少ないのも理由の一つだっただろう。
それこそ木々が密集した密林地帯や沼地、噴火する火山や常に雪景色の豪雪地帯……そんなところはどこにも存在せず、どこまでも砂漠ばかりが続いているのだから。
一応いくつかの山と細くそびえる高さだけはある岩山、それと地面がひび割れた結果かのように谷間というか渓谷のような場所もあるが他は本当に砂ばかりだ。
もちろん海のような広大な水辺などどこにも見当たらず、オベリスクを超えた外周部にもどこまでも果てることもなく砂漠が続いているように見える。
それこそ歩いてこのまま別の土地まで行けてしまいそうなぐらいだが、前の島でのことを思えば多分ここも見えないバリアのようなもので囲われているはずだ。
まあそうでなければ、ここも宇宙に浮かぶ箱庭のようなところでしかないのだから外に向かって進みすぎると宇宙空間に放り出されてしまうことになる。
何よりオベリスクもあることだし、やっぱりここから脱出するにはまた前と同じように洞窟を潜ってアーティファクトを回収してそれでオベリスクを起動した先にいる強敵を倒して……はぁ、またあの悪夢のような試練の数々をやり直さないといけないのかぁ。
今回名前が出た動物
リマントリア(巨大蛾、モスラ)
プテラノドン
アルゲンダヴィス(アルケン君)