四十一頁目
ボーラで拘束できない相手を仲間にするのは中々骨が折れる。
ましてまだ鎧のような役割も兼ねているサドルを装着していない肉食達に盾になって貰うわけにもいかない。
だからと言ってサドルを装備しているとはいえ元々のボディが貧弱極まりない上に貴重すぎる飛行能力の持ち主であるモスラを前に出すなど言語道断だ。
こうなると下がりながら麻酔矢を打つしかないのだけれど、砂に足を取られたりする事故が起こる可能性を考えたら二匹を同時に捕獲するのはやめておいた方がいいだろう。
実際に先ほど複数匹のラプトルを相手にしたせいで軽く手傷を負ってしまったぐらいだし、同じミスを繰り返すわけにもいかない。
どうせこの瘻付きは基本的に運搬と水筒役なのだからとりあえずは一匹いれば十分だし、雌をかばうために前に出ていたらしい傷だらけの雄の方は倒してしまうことにしよう。
早速肉食達をけしかけて四匹がかりで攻め寄せると雄個体はろくに反撃もできないままあっさり倒れた。
そのままの勢いで雌個体にまで襲い掛かろうとする仲間の動物にすかさず待機命令を出すと、今度こそ俺は反撃しようとする瘻付きに麻酔矢を……ってあれ? なんか急に逃げ出し始めたんだがどうなってるんだ?
四十二頁目
どうやらこの瘤付きは仲間がいるときは強気になって敵に反撃してくるが、孤立している場合は同種族に助けてもらおうとしているのか必死になって逃げ惑うばかりになるようだ。
前の島ではこのような習性をもっている動物はいなかった気がするが、考えてみれば草食なのだから群れを作って動いてもおかしくはないし、仲間のピンチを助け合う習性をもっていても不思議ではない。
まあどちらにしてもこうして逃げ始めるというのならば、麻酔矢という手段がある今となっては好都合でしかない。
ブーメランの時とは違い前へ回って頭を狙い続ける必要もなく、ただ後ろから狙い打てば勝手に麻酔が全身に回って気絶してくれるのだ。
また抵抗しなくなったのでモスラの能力のちょうどいい検証相手になりそうだと早速試してみたところ、思った通りモスラが撒く鱗粉には一時的に相手のスタミナを消耗させ動きを鈍足化させる効果があるとわかった。
尤もやはり当のモスラの耐久性を考えると肉食の捕獲には利用し辛そうだが、今回のような逃げ惑う草食を抑えるにはうってつけだった。
果たして何の問題もなくあっさり眠りに落とせた瘤付きを確認すると、俺はいつも通り懐くまで果実を与え続けた。
これで後は目を覚ますまで他の肉食に襲われないよう護衛すればいいだけ……そう思って周囲を隈なく見回していた俺は、ふと砂がもぞもぞと変に動いている場所を見つけた。
……い、いや違うっ!! 身体が小さすぎる上に色合いが砂に似ているから砂そのものが動いていると勘違いしていたが……あぁ……し、信じられない……こんな生き物が存在するなんてっ!?
ネズミにも狐にも似ているような肩に乗りそうなサイズの動物がぴょんぴょんと飛び跳ねていたかと思うと、俺に気づいたようでこちらを見上げながら小首をかしげて……な、な、な、なんて可愛い子なんだぁあああっ!!
こ、こんな過酷な地にもこんな可愛い動物がいるだなんてっ!! これはぜひとも仲間にしなければっ!!
きっとこのサイズと可愛さなら温厚な草食に違いないだろうし無防備に近づいても平気に決まってるっ!! そしてきっと前の島にいた可愛い生き物のカワウソちゃんみたいに手渡しで餌を食べてくれるに違いないっ!!
そうして仲間になったら思いっきり愛でてやるぞぉっ!! ふふふ、楽しみで仕方ないぜっ!!
今回名前が出た動物
リマントリア(モスラ)
ユタラプトル
モレラトプス(瘤付き)
トビネズミ(ネズミにも狐にも似ている肩に乗りそうなサイズの可愛い動物)