六十頁目
金属のインゴットが焼きあがるのを待ちつつ、たまに拠点の傍にある植物から果実を採取するようモレちゃんに指示を出しながらすり鉢で作れる麻酔薬や発火粉にセメントなどを作っていく。
更に時折ベッドの上で蹲るハンスさんへ視線を投げかけるが、こちらはまるで寝ているかのように微動だにしない。
だから俺もあえて話しかけることはせずに、次いで先ほど消耗してしまった麻酔矢の補填作業に取り掛かる。
その後はボーラを幾つか作り、念のために護身用の槍を自分用と……万一を想定して拠点内に幾つか備えておくことにした。
それらが終わるころには金属のインゴットが幾つか出来上がっており、早速それらを火傷しないように回収するとまずは作業机を作り上げた。
そして残ったインゴットを作業机の上に並べてクラフトすることでようやく鉄のピッケルが完成した。
……やっとここまできた……いやまだまだ島の頃の文明レベルまでもっていくことを考えたらこれでも序の口といえる段階だ。
しかし初めて島で目を覚ました時はここまで来るのに一週間以上かかったような気がするし、それに比べるとたった二日目にして鉄を加工するところまで来れるとはやはり俺はかなり成長しているようだ。
ここから先もこのまま調子よく進んでくれたら助かるのだが、はてさてどうなることやら?
六十一頁目
日が落ちて来て暑さもだいぶ和らいできたことだし、完全に日が落ちるまでの間もうひと踏ん張り外でやれることを澄ましてこようと思う。
だから未だに動きを見せないハンスさんに外へ出かけると声をかけて……やっぱり反応がないので、仕方なくメモ書きにして残してから改めて仲間の動物を引き連れて外へと足を運ぶ。
そしてまずはいつものようにモスラに跨ると大きく飛翔していき、空の上から周囲を見回して目ぼしいものを探し回る。
何せハンスさんのような生存者が傍に居ないとも限らないのだ……まあ流石にこれほど短時間に新しい人が現れるとは思えないが、それでも俺は既に三人もの人間の痕跡などを見つけているのだからこれ以上いないとも言い切れない。
……しかし前にも少し考えたがこんなにも人が生存しているのならば、もう少し拠点なりを見つけられないとおかしいと思う。
まあ来たばかりのようであったハンスさんはともかく……と思ったところで、ふと嫌な考えが頭に思い浮かんできた。
……ひょっとしてハンスさんだけでなく、ここで見つけた犠牲者全員が実はつい最近目を覚ましたばかりなのではないか?
それこそ俺と変わりないぐらいのタイミングで……だとすればこうも頻繁に人の犠牲になった跡が見つかるわりに拠点などは一切見つからないのは納得できる気がした。
しかしそれだと島でのことを思えば新たな人間が来るサイクルが余りに早すぎる気が……だが考えてみれば実際にハンスさんなどは俺が拠点を離れたわずかな時間のうちに現れたではないか。
何せ事前にモスラで飛行して確認しているのだから前々のうちからいたとしたら見落としているわけはない……そもそもあそこまで困惑した状態で長く生きられるほどこの砂漠は甘くもない。
だからやはり前の島とは比べ物にならないぐらいのサイクルで人が送られてきているとすれば……それこそ一日に何人も、どころか何なら二人ぐらい同時に来ていたりするのかもしれない。
ただその場合はなぜ前の島と違ってこの砂漠はそんなに人を多く送り込むのか、についてはこの過酷すぎる環境のせいだと思えばそれもつじつまが合う気がした。
それぐらい頻繁に人を送り込まないと誰一人生き延びれられないから……いや生き延びる人が居なさすぎて送り込む人の数が増えているのか……とにかくそういう理由ならば……人間まで他の動物の様に消耗品の様に扱われているようで本当に嫌な考えだ。
今回名前が出た動物
モレラトプス(モレちゃん)
リマントリア(モスラ)