七十九頁目
とりあえず血にまみれた身体を綺麗にしようと繊維を編んで作った布きれで拭った上で、布の衣服を着させてあげることにした。
すると少女は服の着方がわからないのか、それともそういうお世話も周りの人にしてもらっていたのか両手を差し出すばかりで自分から動こうとはしなかった。
仕方なく一通り着せてあげると今回は何の儀式をするのかと尋ねてくる。
……どうやら基本的にいつでも生贄になれるよう、儀式するとき以外は最低限の部分を覆うだけの布切れぐらいしか身に着けていなかったらしい。
そこでいつの間にか近づいていたハンスさんの考察と思わしき独り言が聞こえてきたが、恐らく動物か何かに命を捧げる風習だったのではとのことで、何かを身に着けていたら捕食されづらく……これ以上考えたくないのであえて耳をふさぐことにした。
しかし少女に向き合ったところで、俺には何を言い返していいかもわからないし、ましてこんな肉食動物だらけの砂漠で悠長な真似をしている暇はない。
だから今考えるべきはこの後の行動方針、すなわちこの危うげな少女をどうするのかということだ。
もちろん本人の意思がどうであれ生存者をこんな危険だらけの砂漠に放置したくはないし、傍で見守りたいところであるが……幸い、今のところお世話係と思い込んでいる俺の言うことには素直に聞いてくれそうだから当面は問題ないだろう。
しかし当の本人が生贄になることを望んでいるとなるといずれ厄介なことになるかもしれない……ただまあその時はその時考えることにしよう。
それよりも今の時点ではこの少女を連れて更に先へ進むべきが、或いは一度安全な拠点に戻って保護すべきかを悩むところだ。
この少女もハンスさんと同じく動物を与えたところで戦闘事に参加できるようには見えないし、俺一人でこの二人を守りながら何があるのかわからない場所を探索できるのかと思うと不安で仕方がない。
しかしそれを相談しようと口にしてもハンスさんは思い出したように早く進もうというばかりだし、少女の方はニコニコしながら首をかしげるばかりだ。
……ああ、どうしてこう次から次へと問題児ばかりと出会ってしまうのか……それともこの砂漠にまともに協力し合える人間はいないのだろうか?
もしいるのなら早く会いたい……俺がストレスで倒れる前に……ぐすん。
八十頁目
今更ながらに動物の傷を癒せる豚を仲間にできなかったのが悔やまれてくる。
あいつさえいればウルッフ達はともかくアンキロ君を回復させることだってできただろうし、戦闘に関してももっと安心することができただろうに。
尤も人の命がかかっている状況だったのだから下手に仲間にしようとして被害が出なかっただけよかったと思うしかない。
まあ今回の一軒でメカパロロ君の咆哮が思った以上に効果的だと再認識できたし、これならばよほど厄介な奴が出てこない限りは問題なく進めそうである。
……ただその厄介な奴がこの砂漠にいることを俺はもう知っているのだが……もし道中であのゴーレムが出たらと思うと、とても心細くて仕方がない。
ただでさえハンスさん一人すら守り抜ける自信がなかったというのにそこへ新たに少女まで加わっては……だからと言って引き返すといってもハンスさんは聞いてくれないだろう。
もちろん自分勝手なハンスさんを置いて少女と共に引き返す、ような片方を見殺す真似ができるはずもない以上一緒に進むしかないのだが……とりあえずこの子には追従させたウルッフCに跨ってもらってハンスさんを追いかけるとしよう。
今回名前が出た動物
ダエオドン(豚)
ダイアウルフ(ウルッフ)
アンキロサウルス
TEKパラサウロロフス(メカパロロ君)
ロックエレメンタル(ゴーレム)