ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第458話

八十七頁目

 

 少女も健康を取り戻し、また日も落ちて来て周囲の熱気も落ち着いてきた。

 こうなると今度こそオベリスクで作業しようと主張するハンスさんを止めようもなく……また先ほどの事件で気力も削れていた俺は素直に従うことにした。

 何より実際にハンスさんの助言そのものは的確だったのだから、今のところは逆らう理由がないのも理由の一つだった。

 

 だからとりあえず護衛代わりのウルッフ達三匹の背中にそれぞれ跨り、彼らに泳いでもらって池の中心にあるオベリスクの操作盤へ向かう。

 すると早速ハンスさんは意気揚々と操作盤に手を伸ばし……そこで自らの左手にある鉱石が光り出したところで、一瞬だけ目を見開くと苦しそうにも忌々し気にも見える複雑な視線を投げかけた。

 それはまるで今その鉱石の存在に気づいたような反応にも見えたし、逆にあえて見ないふりをしていたようにも思われた。

 

 そしてハンスさんは鉱石の輝きなど無視するように操作盤に向かい合うと何かしら作業をし始めて……すぐに戸惑いと怒りの混じった声を上げ始めた。

 何故何も残っていないのだとか、奴らは俺の私物まで処分したのか、などと叫んだかと思うと苛立たし気に操作盤を殴りつけて逆に手を痛めたのかその場に蹲ってしまう。

 全くわけがわからないが、手に怪我でも負っていたら大変だと思いハンスさんに近づいた……ところで、俺の左手が何気なくオベリスクの操作盤に触れると鉱石とオベリスクが呼応するように光り始めた。

 

 その光景にハッと顔を上げたハンスさんが何かしら操作したかと思うと、俺に向かってアイテムをアップロードする方法を知っていたのかと尋ねてくる。

 やっぱり訳が分からず首を横に振る俺に対し、ならこれは何だ、とハンスさんが操作を続けたところ、不意に幾つもの道具がその場に現れたではないか。

 壊れた毛皮防具一式に無線機と長槍、弾のないアサルトライフルに同じく弾切れのポンプアクション式ショットガン……そしてひし形の鉱石が結び付けられた弓矢。

 

 これはまさか……いや間違いないっ!! 俺が島の管理者と戦った時に身に着けていた装備じゃないかっ!?

 ならこの弓矢についている鉱石はひょっとしてオウ・ホウさんなのかっ!? 前にフローラのホログラムが心配しなくてもいいとばかりの仕草をしていたのはこういうことだったのかっ!?

 

八十八頁目

 

 現れたアイテムを回収しながら……特に弓矢についている鉱石が前にこの砂漠で回収した奴と違い、熱気のようなものを感じられると確信した俺は一気に道具が増えたこともあり嬉しさの余り興奮しまくってしまう。

 そしてもう一度これが何か尋ねてくるハンスさんに感謝したりその技術力を素直に称賛しながら、これらのアイテムが前の島で管理者と戦った時に身に着けていたものであると説明した。

 ……正直ちょっとハンスさんのことを胡散臭い目で見ていたが、こんな恩恵を見せつけられては素直に認めざるを得ない。

 

 ハンスさんも俺の説明を聞いたことで何となく納得してくれたようで落ち着いた様子を見せていたので、ついでに他に持ち込んでいたアイテムが残っていないかも確認してもらうことにした。

 しかしどうやらこれ以外には何も残っていないようだ……ハンスさん曰く、新たな環境でサバイバル能力を更に鍛えるために身体ごと別のARKへ転送しようとした際に身に着けていたものが巻き込まれただけではないか、とのことだ。

 考えてみたらドラゴンに化けた管理者の炎で巻かれて背負っていた荷物は落としてしまっていた気もするので、まあこればっかりは仕方ないだろう。

 

 それにあの時は高品質品で固めていたこともあるし、身に着けていたものだけでも十分すぎる戦力になる……と思ったのだが、冷静に考えたらほとんどが使い物にならないことに気が付いた。

 何せ防具は全て壊れている上に熱いこの砂漠では役に立たない毛皮防具なのだ……最終戦闘の場所が寒かったためにギリー装備から変えてしまったせいだが、あのギリー装備さえあれば物凄く役立っただろうに……残念で仕方がない。

 また弾の無い重火器はもちろん使い物にならない……逆に言えば弾さえ精製できるようになればまた使えるようになるのだが、そこまで文明を発達させるにはどれだけかかることやら……。

 

 そう考えるとすぐに使えるものといえばちょっとだけ質の良い長槍、も微妙だし実質オウ・ホウさんの鉱石付きで高品質な弓矢ぐらいのものだ。

 尤もタダの弓矢でもここまで大活躍していることを思えば、この高品質の弓矢はとても頼りになりそうだ……そう思ったところでハンスさんが何か困惑したような声を漏らした。

 そして『これは……これもお前が作り上げて持ち込んだものなのか?』と困惑とも驚きともつかぬ声で呟きながら何事か操作して……何かが現れてカツンとオベリスクの転移装置部分にぶつかり金属質な音を立てた。

 

 反射的にハンスさんと共にそちらへ視線を向けて確認すると、そこには小さい球状の……見たこともない未知の機械が転がっているではないか。

 見た限りSFとかにありそうな小型端末っぽいし末未来のテクノロジーでできてる何かに思えるけど……ハンスさんですら見たこともないというこれは一体?

 ……ん? なんか表面に……かすれてるけどこれは文字か? HL……v0.5……?




今回名前が出た動物

ダイアウルフ(ウルッフ)
ドラゴン
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