八十九頁
見たこともない新たな物体に驚きと興奮を隠せない俺とハンスさんだったが、幾ら触ってみてもうんともすんとも言わない。
故障しているのか、或いはv0.5というのがバージョンを表すのだとしたら何かのプロトタイプ、というか未完成品……なのかもしれない。
キラキラ光っているという理由で例の少女は興味深そうに弄っているが、動かないようではこのまま彼女の玩具替わりにしかならなそうだ。
まあハンスさんが折を見て修理なり改良なりして動かせるようにできるか試してみるとのことだが、とりあえず今はもう少しオベリスクを……うわぁっ!? ハンスさんが水中から飛び出してきたワニに食いつかれて飛んでったぁっ!?
早く助けないと……と、取りあえず狼に攻撃指示を出しつつこの高品質の弓矢で打ち抜いて……おぉっ!! 頭部に当てたら瞬殺できるじゃないかっ!!
流石高品質っ!! これは強いっ!! ひょっとしてこれさえあればあのゴーレムだって……なんて思いあがるのはやめておこう。
それより今は溺れているハンスさんを助け……あぁああっ!? こ、今度はコレオちゃんの同種が飛びかかってきたぁっ!?
な、なんだって急に? ま、まさかオベリスクに干渉したから……だけど前にTEKレプリケーターを作った時はこんな……な、なんて思っている場合じゃないっ!! とにかく助けないとっ!!
九十頁目
やはりただの偶然だったのか、コレオちゃんの同種を倒した後も肉食が攻め寄せ続けるということはなかった。
ただ出血するほどの傷を負ってしまったハンスさんは、流石に今日はもう拠点で休むことにしたようだ。
そして俺にエレメンタルダストを少しだけ渡すと、少女に食べさせたのと同じドリンクを作って持ってきてほしいという。
あれの体力回復効果を利用して何とか傷を早めに癒そうとしているのだろう。
そういえば前の島でも自作した料理には微量だけど回復能力を高める効果があったっけ。
だけど料理の回復量よりメディカルブリューの方がずっと効果的だ。
こうして水源から水道を引いて水を無尽蔵に使えるようになった今、作れないこともないのだが何故そっちを要求しないのだろうか?
九十一頁目
ろ、ロックウェル氏は本当にすごい……改めて尊敬しなおしてしまう。
カスタム料理を持っていくついでにメディカルブリューも作ってハンスさんに渡したら、最初こそ物凄く胡散臭そうな顔をしていたが少し飲んでその効果を体感したら驚きの余り間抜けな顔を晒したではないか。
どうやらロックウェル氏がこの島で作り出したメディカルブリューは未来人のハンスさんですら知らない新しい薬だったようだ。
確か前に読んだ日記からして俺よりも前の時代から来てるっぽいのに未来人よりも先を行く知能があるだなんて……本当にあの方は素晴らしい存在だ。
果たしてハンスさんも何か思うところがあるのか、俺にこの薬のことを聞いた後でしばらく黙り込んだかと思うと少し一人で考えたいと言って布団に潜り込んで静かになってしまった。
……まあ拠点の中で大人しくしてくれているのなら手間がかからなくて助かるからいいか。
さて日が完全に落ちるまでまだ時間もあることだし、取りあえず製錬炉を作りそこでくず鉄を溶かしておいて、その間に周辺から素材集めと動物の捕獲でも行っておくとしよう。
今回名前が出た動物
カプロスクス(ワニ)
ティラコレオ(コレオちゃんの同種)