ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第466話

百四頁目

 

 例の少女が落ち着いたところで、改めてハンスさんは話の続きを語り始めた。

 つまりは『ARKシステム』と『ジェネシス計画』についてだが、まず今はあまり関係のない『ジェネシス計画』から簡潔に説明してくれた。

 これは前にハンスさんが言っていたように要するに宇宙を移動する移民船であり、地球の資源とテクノロジーに生命を再現するためのデータ、そして有能と見做された人類を眠らせた状態で可能な限り積み込んだ上で人が住める星を求めて旅立つというものだった。

 

 いわゆるSFで定番な好き放題した挙句に駄目になった地球を捨てて宇宙船で脱出する的な余り虫の好かない話だが、まあ人類を絶滅させないための手段としては理解できなくもない。

 俺のそんな気持ちが伝わるのかハンスさんは申し訳なさそうにしながらも、本来自分は……或いは自分の本体は『ジェネシス計画』側、つまり冷凍冬眠されて新天地でやり直すはずだったと繰り返し告げてきた。

 そして移民達は定住する星の環境がどんな形であれ適応して生きていけるよう夢の中でサバイバルシミュレーションをするはずであり、当初はハンスさんもこれはただのシミュレーションだと思ったようだ。

 

 ……しかし空にそびえるARKシステムの根幹でありジェネシスには存在しないオベリスクの存在を見て、頭の回転が速いハンスさんは嫌でもここがシミュレーションではないと理解できてしまった。

 それでも認めたくない一心で現実から目を背けてしまい……とその節は本当に迷惑をかけたと再三にわたって謝罪してくる。

 そんな彼にもう気にしていないと告げると、ありがたいと口にしたうえで……ついにハンスさんは『ARKシステム』について語り始めた。

 

 ARK、すなわち箱舟と称されるこの世界……それは名前の元になった神話にある通り環境が激変して絶滅するはずの生命を生き永らえるための宇宙船、という側面もあるというが本質はそっちではないらしい。

 むしろ本当の目的はあらゆる過酷な環境を克服できる……それこそエレメントで汚染された地球でも生きていけるほどの強靭な人類を育て上げることにあるという。

 それは一体どういうことかと聞くと、実のところARKシステムにはエレメントの汚染環境を浄化する機能が付いているという。

 

 しかしハンスさんの時代の地球は余りにも汚染が酷すぎて流石のARKシステムでも浄化しきれないため、長い時間をかけてエレメントの汚染が薄れるのを待っているのだという。

 そして浄化できるようになった際には全てのARKが生命と共に地球へと舞い戻り地球からエレメントの汚染を一掃するようになっているようだ。

 ただエレメントの汚染そのものを排除しても地球が荒廃しきっている事実に変わりはないため、普通の人類を戻してもやっていけるはずがない。

 

 だからこそ過酷な環境でも逞しく生きていける人間、すなわち優れたサバイバーを育成しながら地球からエレメントが薄れて舞い戻る日を待ち続ける……それこそが『ARKシステム』なのだという。

 ……まさか全ての元凶がエレメントにあっただなんて驚きだ……だけど俺もアレに誘惑されていたとはいえ便利な道具として利用しようとしていたのだから文句は言えないのかもしれないなぁ。

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