百五頁目
ここまで話し終えたハンスさんは後でオベリスクにまた干渉してあれからどれだけの時が経過しているか確認するというが、まだ戻っていないところを見ると長くても数十年ほどしか経過していないのだろうという。
……しかし俺が前の島で見つけた日記の断片が隠されていた場所、というか廃墟となっていた建造物を見る限り既にARKシステムが始まってから百年以上経過しているような気がする。
そう告げるとハンスさんは首をかしげるが、確かに自分はARKシステム側にはそこまでかかわっていないがと前置きしたうえで、本来の設定とは何かが歪になっていると感じていると呟いた。
それはつまりこの砂漠という過酷すぎる土地にいきなりハンスさん、というよりも全くサバイバル経験のない人間が送られていること。
あくまでもARKシステムは逞しいサバイバーを育て上げるのが根幹であるため、それこそ最初は比較的楽な環境……それこそ俺が目を覚ましたあの島のような場所から始まるはずだという。
そうでなければ人は育つ前に命を落とすばかりでリソースが無駄になるだけだし、これは異常事態なのかもしれないという。
確かに前の島で経験を積んでいた俺はこの砂漠でも何とかなったし、そんな俺と合流出来たからこそハンスさんと例の少女は助かったが、それ以外の人間はすぐにやられているようなのは頻繁に聞こえる悲鳴からも明らかだ。
だから俺の言う通りあれから何百年単位で時が経過しているのにこうしてARKが地球に戻っていないのも含めて、ARKシステムに何かしらのエラーが起きている可能性はあるかもしれないのでそれも砂嵐が収まった後でオベリスクに干渉して調べれるだけ調べてみようという。
……そんな彼に俺はふと前の島にあった機械的な祭壇に触れた際と管理者を倒してこの砂漠に転移する前に出会った『待つ者』について聞いてみることにした。
『待つ者』も俺に何かさせようとしているようだったし、てっきり俺にそのエラーを直して欲しいのかもしれないと何となく思っていたが、ハンスさんならもっと詳しいことがわかるかもしれない。
そうして彼に『待つ者』のイメージと共に告げてみると、ハンスさんは『ホモ・デウス』に出会ったのかと感慨深そうに呟いた。
曰くそいつは人類が例のエレメントを上手く使って進化した超越者とでもいうべき存在らしく、一応ARKを管理するシステムそのものでもあるらしい。
……地球や生命そのものを汚染するエレメントを使って進化したとか言われても……それこそ汚染されきった害悪的な存在なのでは?
そう思って尋ねてみるがハンスさん曰く、エレメントを直接摂取するのではなくあくまでもエネルギー源としたうえでしっかりと専用の機械を使ってアップデートした結果だから一応邪悪な存在ではなかったという。
尤も精神性が人を超越しすぎていて、見ようによっては極悪とも思える非情な判断を下すこともあったらしいが……特に物凄く優秀だったサンティアゴという人など本人の意思を無視して何体もクローンが作られて、と語り掛けたところでハンスさんは落ち込んだ様子で、そんな奴らが人との約束を守るはずなかったのに自分は何と愚かだったのかと嘆き始めるのだった。