百三十三頁目
やはりというか今夜も人の悲鳴は聞こえてこなかった。
俺達が生存しているお陰か、或いは最初の位置から距離があるためか……あの少女と離れられるようになったことだし近いうちに最初の拠点に戻って確認した方がいいかもしれない。
そんなことを考えながら完全に夜の帳が下りた世界でまた焚火を囲って舞を披露している少女を俺達は見守る意味も兼ねて眺めていた。
幼い少女の美しく洗練された動きに微笑ましさすら感じて、見ているだけで俺もそして多分ハンスさんも心が癒されていたと思う。
……なおオウ・ホウさんは少女から離れられないせいで少女に振り回されるようにその周囲をグルグル飛び回っているが、仄かに発光しているために残像として中空に光の線を描いている。
その様子は本当に妖精と踊っているような神秘的な光景であり、だからオウ・ホウさんの困惑したような声を他所に俺もハンスさんもついつい微笑ましく見守ってしまうのだった。
百三十四頁目
踊りが終わったところで、少女はまた俺に祈りの言葉を求めてきた。
もちろん特に何も思い浮かぶはずもなく……浮かぶオウ・ホウさんを見て某三国志の黄色い布のあれを思い出しかけたが、とにかく今回も例の歌をお願いしておいた。
そうしてやっぱり可愛らしく、だけど踊っている時よりは大人しく佇んで歌う少女を見守っているとハンスさんとフラフラになりながら稼働範囲内だったらしいオウ・ホウさんが近づいてきた。
そして二人はチラリと少女の方を見つめたかと思うと、俺にあの子の名前はどうするのかと尋ねてきた。
……正直俺も薄々考えてはいたのだ。
いつまでも名前がないのはどうなのかと……だけれど名前を付けるってのは大変なことだ。
それこそペットみたいに動物に名付けるとはわけが違うほど重いことだと思う……なのに何の血縁もない俺なんかが勝手につけていいものなのか。
……後はまあ純粋にネーミングセンスに自信がないのもあるけれど……だって動物の名前、今のところ誰も良いって言ってくれたことないしさぁ。
だからいっそ今は天使だと思われて慕われている上に結婚歴もあって俺より年上のオウ・ホウさんの方が適任だと思って頼んでみたが、少女の命を救ってここまでずっと守ってきた俺の方がずっと適任だと言って譲らない。
ハンスさんの方もその通りだとばかりに頷いたかと思うと、何より俺がリーダーなのだからしっかりしてあげたまえなどと言ってくる始末だった。
はぁ……人の、それも女の子の名前かぁ……どうしたもんかなぁ?
頭を悩ませながら歌い終わったようで恭しく一礼する少女に拍手していた俺だが、そこで少女はまたどこかへ出かけると思ったのか近くにいたカンガルーのお腹に収まろうとする。
……そういえばカンガルーにも名前つけてなかったな……まあこっちは簡単に一文字取ってカンガちゃんで……カンガルーと少女……カンガちゃんからとった一文字をつけてルゥちゃん……い、いやこの名付け方はどう、なのかなぁ?
今回名前が出た動物
プロコプトドン(カンガルー・カンガちゃん)