百六十三頁目
未だに腰が抜けた様子で立ち上がれていないハンスさん……どうやら俺がアルケンα達に乗ったまま拠点の上を素通りした際に聞こえてきた未知の羽音が余程恐怖だったようだ。
まあこの状況では敵襲があった際にまともに動物達を引き連れて戦闘できるのはハンスさんだけだし、しかもルゥちゃんを守らないといけない。
ろくに実戦経験がないハンスさんにとってはそれは十分すぎるプレッシャーだったのだろう……と思ったのだが、それにしてもやっぱり何やら過剰反応している気がしないでもない。
そんなハンスさんに気を取られていて気付くのが遅れたが、何気なく顔を上げたところで何か違和感を覚えた。
だから改めて拠点内を見回してみて、すぐに動物の数が減っていることに気が付いた。
夜中だというのに安全な防壁の内側にいる動物の中に狼とラプトルの姿が一匹もなかった。
また複数匹捕まえたはずのミッキーの同種も、何故かハンスさんの肩に乗っている一匹しか残っていない。
他の仲間たちは健在な様子だが、見れば防壁の傍に動物の血痕と思わしき跡が残っている……どうやら豚が傷を癒してくれただけのようで、俺がいない間にかなり激しい戦闘があったようだ。
しかしこの付近にそこまで強力な敵がいるとは思えないのだが……?
そう思って疑問に首をかしげる俺の前で、ようやく立ち直ったらしいハンスさんはよろよろと立ち上がったかと思うと無事に戻ったのは何よりだけれど驚かさないでくれと懇願するように呟いたのだった。
百六十四頁目
俺が戻ったことで安全だと判断されたのか、オウ・ホウさんが何事かルゥちゃんに呟いたかと思うと彼女はカンガルーの袋から出して欲しいとばかりに手を伸ばしてきた。
そんなルゥちゃんを抱き上げるようにして外に出してあげると、ちょうど日が落ちたこともあってか、すぐに彼女はいつものように篝火の周りで舞い始めた。
一日ぶりだけれど相変わらず美しい所作に心を癒されようと眺めている俺の隣で、ハンスさんは再び疲れたように腰を下ろしたかと思うと改めて収穫について尋ねてきた。
尤もそれはルゥちゃんの傍から離れられず振り回されているオウ・ホウさんにも伝えたかったので、あえて俺は先にハンスさんの話を聞くことにした。
果たしてすぐに納得してくれたハンスさんは拠点に残った自分たちに何が起きたのか語り始めたが、思いのほか色々あったようで俺は思わず聞き入ってしまった。
……まさか俺がいない間にあの強力な特殊個体の襲撃があっただなんて。
今回名前が出た動物
アルゲンダヴィス(アルケンα達)
ダイアウルフ(狼)
ユタラプトル
トビネズミ(ミッキーの同種)
プロコプトドン(カンガルー)