百六十七頁目
ハンスさん達の報告も一通り終わったところで、今度は俺の方から遠征で何があったのかを話し始めた。
当初の予定通り山に沢山あった貴重資源の数々とそこに生息するアルケンαの同種を始めとした魅力的な能力もちの生物達、そして帰り道で見つけた例の救難物資についても一通り語りつくす。
実際に手に入れた水晶などの素材やアルケンα達の能力を見せつつ説明したこともあってか、前の島での経験があるオウ・ホウさんは元よりハンスさんにも遠征は大成功だったのだなと喜んでもらえた。
尤もルゥちゃんだけは良く分からないようで首をかしげていたが、それでも俺達が喜んでいる様子を見て何だかいつもより楽し気に微笑んでいるように見えた。
……うん、多分気のせいじゃないと思う……ルゥちゃんは初めて会った時に比べて本当に少しずつだけれど表情がよくなってきていると思う。
そう思って左手首の鉱石を眺めてフローラに感想を求めると、彼女もまたそうだと言わんばかりに頷きながらルゥちゃんを微笑まし気な視線を投げかけた。
……かと思えばすぐにフローラは顔を戻すと俺の懐をじっと見つめてくる。
まるで何か忘れてるんじゃないかと言わんばかりの表情で……だけど一体何が……あぁっ!?
そ、そうだっ!! すっかり忘れてたけどこれも手に入れていたんだ……先達者様の日記っ!!
百六十八頁目
後で安全な場所で落ち着いてから読もうとすぐ取り出せるよう懐に入れておいた日記を取り出し、改めてハンスさん達に見せる俺。
するとやっぱり前の島で日記の存在を知っているオウ・ホウさんと自らの置かれている状況に思うところのないルゥちゃんは大した反応を見せなかったが、代わりとばかりにハンスさんが、俺たち以外にもこの砂漠で日記を書き残せるほどしっかりサバイバルできている人間がいたのか、と興奮したように声を上げた。
そういえば俺も初めてこの手の日記を見つけたときは他に生存者がいたのかって滅茶苦茶興奮したっけなぁ……そんなことを思いながら、ハンスさんにこの日記を見つけた場所にある建築物がいかに古めかしくなっているかを教えてやる。
同時に前の島で見つけた経験も併せて語り、この日記の主は前に語ったロックウェル氏と同じくずっと昔にサバイバルしていた先達者様であろうことを教えると、ハンスさんは少しがっかりしたようだった。
それでも中に書かれている情報に興味津々なようで早く読むよう俺に進めてくる。
それに対して俺はハンスさんほど日記の内容に興味を持ってはいなかった。
確かに前はこの場所がどういう場所なのかを先達者様が残した情報から読み解けるのではと思ってかなり気にしていたけれど、俺はもう未来人であるハンスさんから直接ARKという場所がどういうものなのか聞くことができたのだ。
だから俺は正直余り日記を重視しておらず、実際にこの砂漠で俺は先達者様の日記を探してみようとは思っていなかった。
それでも偶然とはいえこうして手に入ったのだからこの砂漠でサバイバルするうえで参考になりそうな体験が載っていれば御の字、ぐらいの気持ちで日記を開いた。
だけれどそんな考えは、筆者の名前を見た時点で吹き飛んでしまう。
何故ならそこには前の島でも日記を書き残していたヘレナ氏の名前が書かれていたのだから。
そ、そういえば確かに彼女も……いや正確にはロックウェル氏達の活躍も含めてだが、彼女らはあの島にある洞窟からオベリスクまで完全に攻略していたはずだ。
つまり彼女達も火山の奥にある洞窟に挑める状況だった……そして彼女の日記がここにあるということはヘレナ氏もまた俺と同じようにあの管理者を攻略してこの砂漠にやってきたということなのだろう。
俺がたどった道を俺よりずっと前に通り抜けているヘレナ氏……いや先達者様に改めて敬意を称したくなるし、何より彼女らが辿った軌跡にも再び興味が湧いてくる。
……何せここに来るまでの過程が俺と一緒ということは、彼女らが至った結末と同じ未来が俺にも待ち構えているのかもしれないのだから。
今回名前が出た動物
アルゲンダヴィス(アルケンαの同種)
今回登場した日記
ヘレナの記録(#4)