百六十九頁目
日記を読む限り、どうやら前の島でも動物を調べていたヘレナ氏の研究意欲は全く衰えていなかったようだ。
何せあの瘤付き……モレラトプスという名前らしいあの動物がその特徴からラクダなどの生き物を元に遺伝子操作された生き物であると見抜いているのだ。
尤もこのARKが自然環境でないことはとっくに気づいているらしいが……まあ彼女も俺と同じものを見たのだろうし当たり前か。
ただ流石の彼女も未来人には会っていないためか、環境から色々推測を立ててこそいるがこの場所が何のために作られているのかはこの日記を書いている時点では理解できていないようだ。
……というか俺だってハンスさんと会話しなければ分からないことばかりだったし、当然と言えば当然なのだが……ひょっとしてハンスさんと無事に合流出来たのはかなりの行幸だったのではないだろうか?
そんなことを思いながら顔を上げてみれば、すぐ傍で覗き込むように日記を読んでいたハンスさんが何やら感心したような声を漏らすのが聞こえてきた。
どうやら同じ科学に携わる人間としてヘレナ氏の探求心に思うところがあるようだ。
実際に日記を読み終えたハンスさんはロックウェル氏に続いてこの女性もまた素晴らしいと先達者様への尊敬を改めて明らかにした上で、この人の日記がもっとなるのならばどのように立ち回ったのかぜひ知りたいと口にするのだった。
だからつい俺がこの砂漠はともかく前の島にいた際にヘレナ氏の日記を幾つか見つけたと漏らしたら、途端に食いつかれてその内容について詳しく語るよう迫ってこられてしまう。
……ま、まさかここまで感銘を受けていたとは思わなかった……これはちゃんと話すまで離れてくれなそうだなぁ。
百七十頁目
日が落ちていることもあり、何よりルゥちゃんが眠そうにしていたので取りあえず住居の中に戻った俺達。
そのままルゥちゃんを寝かしつけるようオウ・ホウさんに頼みつつ、俺とハンスさんはクラフト作業を行いながら前の島で見つけたヘレナ氏を始めとした先達者様の日記について覚えている範囲で語っていった。
するとハンスさんはやっぱり研究職であるロックウェル氏の話にも食らいついたが、それ以上にヘレナ氏の情報に興味深そうな様子で聞き入っていた。
薬剤関係の生成はどちらかといえばロックウェル氏の専門だっただけに、メディカルブリューなどに感心していたハンスさんはてっきりそっちの方が気になると思っていただけにちょっと意外であった。
そんな俺の想いを他所に話を聞き終えたハンスさんは日記の内容から先達者様たちが辿ったであろう道筋を想像しているらしく、やはりARKシステムのコンセプトは間違っていなかったのかもしれないとどこか嬉しそうに呟いた。
何だかんだでハンスさんもこのARKシステムの構築に関わっている身として、本当に意味のあるものだったのかが気になっていたのだろう。
……まあ確かにこのARKで俺を始めとした人間達は非常に苦労しているし地獄のような目に合っているが、そんな環境に揉まれることで肉体的にも精神的にもタフに成長できているのは否定できないのだが……こんなちょっとしたことですぐ命の危険を感じるハードすぎる仕様はもう少しどうにかならなかったのかなぁ?
今回名前が出た動物
モレラトプス